中高時代はセーラームーンが好きなことをひた隠しに

──小学生のころはどんなお子さんだったんですか?

 もう幼少期から、根っからのオタク気質で(笑)。当時はゲームにハマっていましたね。友だちと遊ぶってよりは、1人で黙々と取り組んで極めるのが好きなタイプでした。これは今にも通ずるところですよね。

──なるほど。どちらかというとインドア派というか。

 でも中学校で、友だちに誘われてバスケ部に入ったんですよ。

──おぉ、一気にアクティブに……!

 そう。いま考えたら「よう、3年間も頑張れたなぁ」って(笑)。これも「セーラームーンが好きやったからハマれた」と思うんですよね。

 というのも、バスケってチームスポーツなんですよ。みんなで力を合わせて、励まし合いながら相手チームに勝つっていう。さっき言ったセーラームーンの「絆」とか「友情」を、ドリブルしながら感じてて(笑)。

──なるほど~! バスケもセーラー戦士(初期)も5人で1チームですしね(笑)。

 あ、ほんまや! すごい(笑)。

──じゃあ中学生のころはバスケに熱中しつつも「セーラームーンオタク道」を突き進んでいたわけですか?

 いや、実は中学・高校はいったんセーラームーンから距離を置いていた時期がありまして……。

──えぇ! まさかの急展開だ。どうして離れちゃったんですか?

 もう、完全に思春期ゆえですね(笑)。今は「推し」とか「オタク」って、ものすごくポジティブな言葉ですけど、当時は自分が「オタク」だって、ほんまに周りに言えなくて……。

──確かに、十数年前は「オタク」は、気持ち悪がられる風潮もありましたよね。

 そうそう。「セーラームーン好きだなんて、ちょっとでもこぼしようなら、いじめられるんちゃうか……」って思ってましたね。「うわ、あいつ陰キャや」とか言われそうで。だから、学生時代はおびえていたと思います。

 自分はもちろん、何よりセーラームーンが否定されるのが嫌だったんですよね。だから、学校ではひたすら隠していました。あと小学生のころに集めていたグッズも一部は捨てちゃったり……。いま考えたらほんまにもったいない……。

──「学校ではオタクであることを隠す」ってのは、20代後半以降の全オタクがうなずく話ですよ、ほんとに(笑)。

 みんな言えなかったですよね。ただ、もちろんセーラームーンは大好きだったので、心の中では「いよいよ私も月野うさぎちゃんと同い年や!」って、うれしかったんですよ。「この興奮を誰にも言えない……」っていうもどかしさを感じつつ(笑)。

部活で生かした、月野うさぎの「包容力」

──なるほど。“ステルスセーラームーンオタク”だったんですね。

 そうですね(笑)。だから周りからは認知されていなかったけれど、当時から「うさぎちゃんの生き方や考え方」を吸収していました

──どんな?

 例えば、うさぎちゃんの包容力ですね。中学のバスケ部のメンバーは、性格もスクールカーストもまったく違う女子が集まってたんですよ。だから、めちゃめちゃ意見が食い違うんです。

 そこで「これはセーラー戦士と一緒や」と。セーラー戦士もみんな考え方が違うので、衝突することがあるんですよね。でも、うさぎちゃんは全部受け止めるんですよ。「自分と違う考えやから、あの子は嫌い」ってならないんです。

 例えば、コミックス5巻で、セーラーウラヌス、セーラーネプチューン、セーラープルートというキャラクターが、仲間として登場するシーンがあるんです。最初は馬が合わなくて、もともとのセーラー戦士たちとケンカになるんですよね。一緒に戦うことを拒むんです。

 で、その結果、3人がピンチになっちゃうんですよ。もとから仲間だったセーラーヴィーナスは「助ける必要ないよ」って言うんですけど、うさぎちゃんだけは、すぐに助けにいくんですよ。「仲間だもん」って

──おぉ……寛大だ。

 私も「チームメンバーの意見を受け止めよう」と思いましたね。というか、周りのみんなに対して、もっと優しくなりたいって考えていました。それくらい、当時から自分の身の回りのことを、セーラームーンのフィルターを通してとらえていたんです。

──セーラームーンのおかげで「優しさ」を学べたっていうのは、すごく幸福なことですね。

 ですよね。小学生のころはやっぱり、ただ「可愛い」ってだけだったんですけど、中学・高校のころからセーラームーンの「哲学」とか「思考」も意識し始めましたね

──多感な思春期の時期にセーラームーンの「ソフト面」が入ってきた。

 はい。もう少しうさぎちゃんの包容力を掘り下げていいですか?

──もちろん。

 根本には「先入観を捨て去る」っていう姿勢があると思うんです。関わる前から勝手に「あの人、怖いから近寄らんとこう」とか思わず、誰にでも気さくに話しかける。まずは相手をラベリングしないってことが、包容力ですよね。

 中学生くらいから、うさぎちゃんの優しさに憧れがあったので、私も男女問わずいろいろな人に話しかけていました。周りにはセーラームーンオタクであることを隠していたんですけど、姿勢は完全にうさぎちゃんだったっていう(笑)。