出演番組『LOVE LOVEあいしてる』を通して音楽性が広がった
1999年は、「フラワー」が1位に。当時は、レゲエ調のアレンジやANAのCM「パラダイス沖縄」キャンペーンソングに起用されるなど、この楽曲にまつわる明るい要素がハマって3作ぶりのミリオンセラーとなり、カラオケも大ヒット。
また、同年発売のアルバム『C album』では「Natural Thang」が最上位の13位に。同作は、シンガーソングライター・米倉利紀が作詞・作曲を手がけたスリリングなアッパーチューンで、10周年ベストアルバム『39』では剛が本作を選曲している。剛が'00年代以降のソロ活動で、ファンク・ミュージックを追求していったルーツをも感じさせる。
米倉は、2人がレギュラー出演していた音楽バラエティー番組『LOVE LOVEあいしてる』にも出演していたが、この番組の出演者とKinKi Kidsには、さまざまなつながりがある。同番組をKinKi Kidsとともに司会進行していた吉田拓郎がシングル「好きになってく 愛してく」をプロデュースしたり、彼が番組テーマ曲として書いた「全部だきしめて」を、KinKi Kidsがカバーして大ヒットさせたり、現在もコンサートのバンドマスターを吉田建が務めたりと、同番組が縁となり、彼らの音楽性が広がっていったことがよくわかる。
「夏の王様」と「もう君以外愛せない」の順位が1年で逆転
2000年は、剛主演ドラマ『Summer Snow』主題歌の「夏の王様」と、光一主演ドラマ『天使が消えた街』テーマ曲の「もう君以外愛せない」が初登場1位、2位となった。発売年では、圧倒的に陽気なリズムの「夏の王様」が上位だが、翌年以降は、しっとりバラードの「もう君以外愛せない」のほうが上位に残っており、やはり2人の歌声と真摯(しんし)なメッセージソングとの相性のよさが、カラオケヒットからもうかがえる。なお、「夏の王様」は、サビでどんどん高音に駆け上がっていくメロディーラインが突出しており、喉への負担も考慮してなのか、今ではコンサートでほとんど歌われないようだ。
そして、2001年は剛主演のドラマ『向井荒太の動物日記 〜愛犬ロシナンテの災難〜』の主題歌となった「ボクの背中には羽根がある」が1位に。未来を2人で乗り越えよう、というエールソングだが、松本隆による硝子の心を持った青年像や、織田哲郎によるフォルクローレ調のメロディーと、KinKi Kidsの歌声との相性が抜群で、KinKi Kidsの持ち味をさらに広げた。ちなみに、同年末に発売された「Hey!みんな元気かい?」は10位で、そのカップリング曲だった「愛のかたまり」は44位。まだ、「愛かた」人気が起こる前だった。
以上、この5年間は互いに毎年1~2本、ソロでのドラマ主演をしていたことが、コンスタントなカラオケヒットにも大きくつながっていたことが分かる。このころは、ドラマ撮影と並行して、コンビとソロで複数のバラエティー番組や音楽番組、ラジオ番組への出演、新聞や雑誌の取材、海外ツアーも含む全国コンサートと、今から考えれば超人的なスケジュールをこなしていたはずで、それでいて音楽面の高いクオリティーを保っていたとは驚くばかりだ。改めて、トップアイドルの矜持を強く感じさせる。
《取材・文/臼井孝(人と音楽をつなげたい音楽マーケッター)》