サブカル解説YouTuber「おませちゃんブラザーズ」は、放課後の延長

池田ビッグベイビー(以下、池田):僕は、矢崎と中学・高校の同級生で、大学時代に矢崎の紹介で本田と知り合ったんです。タカハシさんと知り合ったのは最近ですけど、実は大学時代にオワリカラのキーボードのカメダタクさんと同じサークルだったんですよ。だから、オワリカラもタカハシさんのことも知ってたんです。

 僕もバンドをやっていたんですけど、卒業のタイミングで夢を追ってフリーターとしてがんばっていくのかってなった時に、僕は就職して土日は音楽に集中するっていうのを選びました。

 だから、仕事も「土日にバンドができるか」っていう基準だけで選んだんです。それで、CMの制作会社の総務に入ったんです。理由は、制作会社って東京からの転勤がないし、事務系の仕事なら土日も休みだろう、と思って。

ヒョウリ:すごい考えてたんだね、すごいな。

池田:仕事自体は全然向いてなかったんですけど、がんばって。でも、しばらくして喧嘩とかあってバンドが解散しちゃったんですよね。それで、その仕事を続ける意味もないし、もっと自分を生かせる仕事がないかなって思って、M-1出たり、キングオブコント出たりしたんですけど、うまくいかなくて。それで本田に相談したんです。

クエンティン・タランティーノ監督作『レザボア・ドッグス』感あふれる1枚。タギングもいい味出してます 撮影/吉岡竜紀

ヒョウリ:ちょっと聞いてみたいんだけど、矢崎たちもバンド「スライディングが普通の歩き方」をやっていて注目され始めてたよね。池田もリリースとかツアーとかしてたし、本格的に音楽だけでやっていこうっていう気持ちはなかった?

矢崎:それはなかったですね。そもそもスライディングは、遊びでやっていこうって組んだバンドだし、バンド一本でやっていくっていうのは無理だと思ってました。

池田バンドメンバーがみんな就職したっていうのもあるんですけど、やってるうちにお金じゃなくて好きなことやっていこうっていう考え方になってましたね。

ヒョウリ僕は、20代はバンドと音楽をすべての中心にしていて、今から見ると不器用とも言えるスタイルを選んでいたんだけど、そういう「バンドロマン」みたいなものって自分がギリギリ最後くらいの世代だという感じはあるんだよね。

 そのあとに大きな価値の変換が起きたって思ってるんだけど、本田たちからは柔軟さを感じて刺激を受けるんだよね。

 で、池田が本田に相談してYouTubeを始めることになった?

それぞれの出会いからバンド活動、独立、そして「カルチャーの魅力を伝える」現在地にたどり着くまでを語っていただきました 撮影/吉岡竜紀

本田:YouTubeを始める時、自分は裏方でやろうかなって思ってたんですよね。だから表に出る役で面白い人が欲しくて。池田は、僕の身の回りにいる中で一番面白いうちの1人だったんですよ。僕は、トリプルファイヤーの吉田さんか、池田と一緒にやりたくて。

 ちょうどそのタイミングで池田から相談されて、友達としても一緒に抜け出したかったし。それで、一緒にYouTubeを始めました。

ヒョウリ:最初は、矢崎はいなくて、池田を前に出した架空ドキュメンタリーみたいなことやってたよね。YouTubeで、どういうことをやるかっていうイメージはあったの?

本田:全然ないっす。フェイクドキュメンタリー作ったり、下手なハイパーヨーヨーやったり(笑)、わけわかんないことして迷走してました。僕と池田2人だと、暴走しちゃうんですよね。

池田:矢崎には前からYouTubeの相談をしていたんですけど、自分たちの中で3人だとバランスいいなって思ったんですよね。その時にちょうど矢崎も「俺も入りたい」って言ってくれて。

 その時に矢崎に言われたのが、「無名の人たちが突然YouTubeやっても、誰だよ?ってなるだけだから、みんなが知ってるものを介して知ってもらわないといけない」ってことなんです。

 それで、自分たちの世代の「平成の懐かしいもの」を扱うっていうのを始めたんです。

 それで…………、変わったね?

ヒョウリ:なんなの、その間(笑)。

本田:それで、カルチャーを語るっていうスタイルが、自分たち的にも興味を持っていたし、これなら続けられるし、いいねってなって。

ヒョウリ:矢崎は、SUSURU TV.で忙しいと思うんだけど、おませちゃんに参加したのはなんでなの?

本田:友達感が強かったんで、「2人が旅行に行くなら、俺も行きたい、仲間外れにされたくない」って感覚だと思います。

矢崎:そうだね、その乗っかりだね。

おませちゃんブラザーズのアジトこと、矢崎さんの自宅兼スタジオ。好きなものに囲まれて過ごすのは至上の幸福ですよね 撮影/吉岡竜紀

ヒョウリだから、放課後の延長だよね。自分も含めて、高校の放課後とか、大学のサークルで話してた時間の延長を生きてるって感じ。僕らは、大学の「文カフェ」っていうカフェテラスに集まって、くだらない話とか、音楽の話とかしていたんだけど、あの文カフェの時間が、いつの間にか仕事っぽくなったようなところはある。大人になったつもりだったけど、気づいたら仮想の文カフェにいるような……。

本田あの「文カフェ」を再現したいっていう気持ちはめっちゃありますね。音楽にめっちゃ詳しい先輩とかいて、聞いていて全然わからないんだけど、面白い、知りたいっていう、ああいう時間をネットで体験してほしいっていうのはありますね。

ヒョウリおませちゃんは、「ナードだけどポップ」っていうのがいいと思うんだよね。海外だと、ナードなゲーム配信者なんだけど、めっちゃカルチャースターっていう人がいるじゃない。日本だと「オタクはオタク」っていう閉じた構造になりがちだけど、おませちゃんにはポップさがある。それは、その友達感、文カフェ感なのかもしれないな。

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 対談Part2では、それぞれが考える「カルチャーの魅力の伝え方」などを語ってもらいます!

(構成/タカハシヒョウリ、編集/福アニー)

【Profile】
●タカハシヒョウリ
ミュージシャン・作家。ロックバンド「オワリカラ」のボーカル・ギター、作詞作曲家。さまざまなカルチャーへの偏愛と造詣から、コラム寄稿、番組・イベント出演など多数。

Twitter:https://twitter.com/TakahashiHyouri

●おませちゃんブラザーズ
ニッチでおませなサブカルチャーを紹介するYouTubeチャンネル。クラスで2~3人しか知らない映画や音楽、漫画をわかりやすく伝える。

YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCE9T0h2qZEUNgn5L-CAQxsg

Twitter:https://twitter.com/omasebros