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生き方

ミュージシャン・タカハシヒョウリ×YouTuber・おませちゃんブラザーズが語る「好き」を発信する際のこだわり

SNSでの感想
永遠の放課後を過ごす30代トークPart2! カルチャー偏愛ミュージシャン・タカハシヒョウリさんとカルチャー解説YouTuber・おませちゃんブラザーズがメディア初対談を実施! 撮影/吉岡竜紀
目次
  • ゆっくりだんだん刺さるものが、一番刺さる
  • YouTubeと他のメディアの違いは? 気持ちいいトークって?
  • 断絶された文脈を再接続して、仲間を増やしたい

 コアなファンが多く注目を集めるカルチャー偏愛ミュージシャン・タカハシヒョウリさんと、わるい本田さん、矢崎さん、池田ビッグベイビーさんからなるカルチャー解説YouTuber・おませちゃんブラザーズ。実は同じ大学の音楽サークルの先輩・後輩同士でもある2組。

 対談Part1ではそれぞれの出会いからバンド活動、独立、そしてマルチな現在地にたどり着いた経緯を語っていただいた。

 このPart2ではPart1のワイワイさから一転、「好き」を発信する際のこだわりや望む未来について真面目に話してもらった。

ゆっくりだんだん刺さるものが、一番刺さる

──おませちゃんブラザーズも、タカハシヒョウリさんも、語り口に押し付けるような不快感がないのが魅力だと思っているのですが、「カルチャーの魅力」を発信する際に意識していることはありますか?(編集担当、以下同)

わるい本田(以下、本田)僕は、たとえば映画を紹介するなら、僕らの動画を見た人が実際にお金を払ってその映画を見に行ってる場面を目の当たりにしたとしても、まったく心が痛まないものを選ぶっていう基準はありますね。

タカハシヒョウリ(以下、タカハシ):それは、僕も基本としてあるよ。やっぱりなにも引っかからないものは、さわれないし。でも、たとえば仕事としてそれをやる日が来たらどうする? YouTubeだったら、案件として映画を紹介してくれとか。

本田:それも、実際に映画を見せてもらってから決めると思いますね。

それぞれが「好き」を発信する際のこだわりポイントや、望む未来について語っていただきました。左からタカハシヒョウリさん、矢崎さん(おませちゃんブラザーズ) 撮影/吉岡竜紀

──ヒョウリさんはどうですか? 依頼があってのお仕事も多いと思うのですが。

ヒョウリ根底に「好き」があるのはもちろんなんですけど、自分なりに伝えたい感情は「好き」だけではないのかなって思ってます。

 たとえば映画を見て「なんかモヤっとするな」っていう感情も、単純に「つまんなかった」だけでは片付けられないものじゃないですか? それを自分なりに翻訳してみて、「あー! それだ!」ってスッキリする人もいるかもしれないし、「わたしはそう思わない」って人もいるかもしれないけど、じんわりと効く1つの価値はあるのかなって。

本田あと「マウントは取らない」っていうのは気をつけてますね。「解説」っていうのがそもそも偉そうなんで。「教える」じゃなくて、同じファンの目線で共感できるようなワードを使うようにっていう。どんどん「解説」というより「感想」に近いものになってきてるのかなと。

ヒョウリ:そこは、おませちゃんのいいところ。僕も、「情報」を教えるっていうより、「見解」とか「価値観」を伝えたいっていうのは思う。自分より詳しくて的確に情報を教えてくれる人ってたくさんいるわけだし、自分はそこから生まれる価値観をちょっとでも面白く伝えられたらいいなと思う。

 でも、それってある意味、スピードが遅い伝え方だよなーとも思う。いかに主観を排除して全体の情報を早く伝達するかっていう、ファスト映画とかの逆の伝え方だよね。

本田だから時代に合ってないのかなって悩むとこもあるんですけど、時代に合わせすぎたら自分たちの個性もなくなって、つまんなくなっていくとも思うし。

 でも、文カフェ(Part1で話題になった大学の食堂)で先輩が話してた時って、よくわかんない話とかめっちゃしてたと思うんですよ。それが、だんだんわかってきた時が、一番深く刺さるんですよね。そういう伝え方ってないかな?っていうのは思ってますね。

 ただ、最近「倍速視聴」ってよく話題になるじゃないですか。僕は、倍速視聴は別に悪いことではないのかなってちょっと思い始めてますね。

ヒョウリ:僕も、倍速視聴が悪いとは思わないんだよね。「良い」というより、情報が加速していくのは「当然のこと」で、当然のことが当然のように起こっているっていう感覚。だって、昔のエンタメより今のエンタメのほうが、何倍もの情報量があるじゃん。その中で育ってきた人を、過去の価値観で縛り付ける必要はないと思うんだよね。

ラジオの放送作家経験もある本田さん心の一冊は、松本大洋さんの『ピンポン』。「僕は陸上とか勉強とか、なにをやるにも二番手になることが多くて。そんな時に勇気をもらった、10代の頃から繰り返し読んでいる大切な漫画ですね」 撮影/吉岡竜紀

本田:その人に合ったテンポ感ってありますもんね。

ヒョウリ:そうそう。もっと言うと、僕はいずれ映画とか音楽といった「時間芸術」が消失すると思っていて、加速したエンタメって瞬間的なものになるんじゃないかと思う。とえば、現実と仮想(バーチャル)がひっくり返る時代が来て、0.1秒で快感を流し込めるエンタメが生まれたら、音楽という形態も大きく変わると思うんです。だから「楽器が演奏できるミュージシャン」という「職業」も、めちゃくちゃ長大な人間の歴史で見たら、一時的なものでしかないんじゃないかと思う。近い将来だけでも、AIの進化で変わると思うし。だからこそ、その文化を慈しみ愛する気持ちがあるんだと思う。

 で、そんな時代になった時に、どんな職業が生まれるか想像するんだけど、その1つは「翻訳家」じゃないかと思うんだよね。たとえば「ビートルズ」のフレーバーを新時代のフォーマットに翻訳して伝えられる人。まり、「こんな楽しみ方があったよ」って価値観を翻訳して提示するような感じ。

 今も、「魅力を伝える」っていう意味ではちょっと意識していることかもしれないです。

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