敬愛するリー様から学び、つながっていくその先は

──今年の8月28日には、おふたりが手がけた『ドラゴンへの道』の再現動画が映画館で上映されましたね。いかがでしたか?

森さん当時『おっさんずぶるーす』というオムニバス映画に私がヒロインとして出演していたので、その関係でプロデューサーさんと監督さんから、“今、森累珠は頑張っているんだから、舞台あいさつの日を1日だけ好きに使っていいよ! お母さんも出ちゃいなよ!”とお声がけをいただきました。その後、劇場さんの許可を得てあの動画を上映することに。劇場に映像が流れたときは、本当にうれしかったですね……!」

累ママさん「私は映画に出演していないんですけど、ありがたいことに舞台あいさつに立たせてもらいました。“申し訳ないんですけど、私は出ていません”って」

森さん「当日は満席で、入れないお客様もいたとかで。私も公開前には胃が痛くなりながら宣伝をがんばっていたので、それを知っている人たちも喜んでくれて……映画館のみなさんもとても温かったですね。中でも、母が演じた猫のシーンは爆笑で、大盛り上がりしました!」

累ママさん「自分の姿がスクリーンいっぱいに映ったときは、もう感激でしたね。いつもはYouTubeの画面サイズなので、こんなに大きな画面で自分たちを見ることはないので……!

──完全再現動画作りでは、どのあたりを見てほしいですか?

森さん「ヌンチャクも習っていたので、アクションに力を入れているように見えるかもしれませんが、実はリー様の表情やしぐさ、演技を見てほしいと思ってやっています。映像としても、そこには力を入れて撮っています。

 そしてTwitterなどのSNSで定期的に情報を発信しているのは、もっと若い人たちにリー様を知ってほしいからです。なかには、ブルース・リーとジャッキー・チェンとの区別がつかなかったり、“アチョー!”という叫び声をおふざけだと思っていたりする人が少なくありません。そうした誤解をこの完全再現動画を広めて、払拭(ふっしょく)していきたいですね」

再現動画をチェックする際は、ぜひ表情にも注目してほしいというおふたり 撮影/北村史成

──本当に、おふたりのブルース・リーへの愛が感じられる作品だと思います。改めて、森さんがブルース・リーから影響を受けた言葉や、いつも心に抱いているメッセージはありますか。

森さん「 “幸せであれ。しかし決して満足するな”“Be water,my friend”など、リー様は本当に数々の名言を残しています。そのなかで、私が一番影響を受けたのは“私が恐れるのは、一万通りの蹴りを一度ずつ練習した者ではない。たったひとつの蹴りを一万回練習した者だ”という言葉です。この言葉から、ひとつのことを突き詰めていく大切さを感じました。

 私もこれまで14年間、女優としてお芝居をずっとやってきましたが、これからも諦めずに続けていきたいと思っています。いま制作している完全再現動画は、リー様の魅力を伝えるとともに、自分のお芝居の延長線上でやっているところもあります。落ち込んだり、つまずいたりしたときは、常にリー様のこの言葉で、気持ちを奮い立たせています

手作り感が満載で味がある猫のお面と、愛用のヌンチャクはファンにも好評 撮影/北村史成
敬愛するブルース・リーのグッズが、部屋中に所狭しと並んでいる 写真提供/森累珠さん
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 最近では、生前のブルース・リーを知るロバート・チュア氏(※2)と初対面を果たすなど、公私ともにブルース・リーへの愛が止まらない、森さん。次回は、再現動画の作品づくりのエピソードや、気になる親子関係についてお話を伺います。

※2:多くの香港スターをプロデュースし、ブルース・リーとも生前、親交が深かったとされる。現在は香港でテレビプロデューサーを務める

(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)


【PROFILE】 森累珠(もり るいす) 10歳で子役としてデビューし、現在は映画やドラマなどを中心にフリーランス女優として活動。13歳のころ、ブルース・リーに憧れを抱いたことからジークンドーを習い、特技としてヌンチャクを習得。女優活動の他、若い世代にブルース・リー始祖の魅力を発信するため、“ヌンチャクガール”としても活動中。

Twitter→@run_kiti、Instagram→@ruice