デビュー曲の“生オケ”に感動した思い出
現在、80年代アイドルが若い世代にも注目されている。当時のヒット曲がSNSで広く拡散され、TikTokユーザーの投稿動画に使われるなど昭和のアイドル音楽カルチャーが再ブレイク中なのだ。こうした現象について、本人はどう分析しているのだろうか。
「娘が日本に帰ってきたときのことです。車の中で松原みきさんの『真夜中のドア〜stay with me』(※)を口ずさむんですよ。“その曲なんで知ってるの? ママの十八番よ”って驚いたら、“すごく流行ってるよ。私たちサブスクで音楽を聴くからね。友達はママの歌をリアルタイムだと思って聴いてるよ”って言うんですよ! “私のお母さんの曲だよって言ったらびっくりしてた”って(笑)」
※松原みき『真夜中のドア〜stay with me』は1979年にリリースされたポップスだが、2020年秋、Spotifyのグローバルバイラルチャートで18日間連続1位を獲得。その他にも竹内まりや『Plastic Love』(’84年)が驚異的にブレイクして話題になった。
「80年代の歌、お金かかってますもん(笑)。打ち込みじゃなくミュージシャンの方たちが広いスタジオに来るんです。『急いで!初恋』のイントロの部分、スタジオで弦楽器のミュージシャンの方たちが弾いてくださっているのを見て、心から感動したのを覚えています。
時代に関係なく、いい音楽を当時のまま聴けるっていうのが、今の時代の音楽環境ですよね。例えばYouTubeの動画は、今なのか、5年前なのか30年前の映像なのか、すぐにわからないですよね。つまり“この歌いいな”と感じるのは、単純に楽曲がいいからなのでは」
いい曲はいつの時代でも受け入れられるということ。世代を超え、世界をめぐって受け継がれ、音楽文化が育まれていく。その狭間にアイドルソングや80年代ポップスがある。
「洋楽でも、80年代の歌をもう一度聴く流れがありますよね。ブルーノ・マーズもそうですし、マイリー・サイラスがフリートウッド・マックの歌をサンプリングしたり。いまの世代が昔にさかのぼっていい曲を歌って。デュア・リパがエルトン・ジョンとコラボした『Cold Heart (PNAU Remix)』がヒットしましたしね」
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インタビューの続き(9月30日公開予定)では、コロナ禍にあって所属事務所から独立して再出発したいきさつや “花の82年組” 同期の中森明菜さんへの思い、デビュー40周年記念アルバム『Affection ~YU HAYAMI 40thAnniversary Collection~』の聴きどころをたっぷり話していただいた。
(取材・文/浦上優)
《PROFILE》
早見優(はやみ・ゆう) 3歳から14歳までグアム、ハワイで育つ。14歳でスカウトされ1982年『急いで!初恋』で歌手デビュー。『夏色のナンシー』『PASSION』などのヒット曲がある。以後、バイリンガルと国際感覚を生かしテレビ、舞台などで活躍。上智大学比較文化学部日本文化学科を卒業。NHK World『Dining with the Chef』、NHKラジオ『深夜便ビギナーズ』(毎月第三土曜日)にレギュラー出演中。