オリエント急行のスタッフがくれた粋なネクタイピン、大好きな蒸気機関車の模型

──第3位は、オリエント急行のネクタイピンです。豪華列車として多くの人々が憧れるオリエント急行。櫻井さんは何度も乗っていて、著書『オリエント急行の旅』(世界文化社)は代表作のひとつですよね。

美しい景色の中を走るオリエント急行 撮影/櫻井寛

「このネクタイピンは、箱根のラリック美術館でオリエント急行の特別展があったときに、僕が持つオリエント急行にまつわるグッズを提供した中のひとつです。オリエント急行のバーマンである、イタリア人とフランス人ふたりからのプレゼント。“フロム・アレックス&フェルナンド”と名前のサイン入りです。少なくとも10回は乗っていますから、すでに顔見知りになっていたのですが、実際に売っているグッズをわざわざ買って、サインを入れてプレゼントしてくれた、極めて思い出深いものです。

サインから、ふたりとの絆の深さが感じられる  撮影/齋藤周造

 オリエント急行は、全盛期には5本ぐらい同時に走っていたんです。その中でもっとも有名だったのが、作家のアガサ・クリスティがよく乗っていた『ベニス・シンプロン・オリエント・エクスプレス』。ネクタイピンにも、ベニスとシンプロンを表す"VS"というロゴが入っています。シンプロンは、スイスとイタリア間の峠の名前です。シンプロン・トンネルを通ることによって、ロンドンから中東に早く行けるようになり、トルコにあるイスタンブールまでの最短ルートだったんです。'77年に廃止されましたが、'82年に運行を再開し、ロンドンとイタリアのベニスを結ぶ観光列車が走っています。

 最初にオリエント急行に乗ったのは'90年ですね。'91年から'92年にはオリエント急行にまつわる仕事がたくさん入って、タキシードを作って、その姿でカメラを下げて撮影していました。ディナー以降の時間帯は、正装が義務づけられていますから。豪華だし、格式高いし、重厚感があるし、歴史と伝統には、ほかのどの豪華列車もかなわないです

オリエント急行の食堂車。高級感に満ちあふれている 撮影/櫻井寛

──櫻井さんの事務所には、たくさんの鉄道模型があって壮観な眺めなのですが、第2位は、その中でもどっしりとした存在感を放つ『ビッグボーイ』の鉄道模型です。

櫻井さんの事務所に置かれている『ビッグボーイ』の鉄道模型  撮影/齋藤周造

『ビッグボーイ』はユニオン・パシフィック鉄道4000形蒸気機関車の愛称で、1941年から1944年にかけて製作された、世界最大・最強級の蒸気機関車です。これは、'19年5月10日、アメリカ大陸横断鉄道開通150周年を記念して復活した『ビッグボーイ4014号機』を忠実に再現したHOゲージのスケールモデル。実物の87分の1サイズの模型ですが、全長は約50センチもあり、迫力満点です。私のいちばん好きな蒸気機関車です

本物の『ビッグボーイ』。漆黒のボディが人気を集めている 撮影/櫻井寛