ソロコーナーの選曲に感じた強い思い、“3人でのショー”の可能性
そして、ここからはお互いのソロコーナー。まずは植草が着替えに入り、その間に錦織がバンドのメンバーを紹介。デビュー当初からテレビやコンサートで共演してきた懐かしい顔ぶれも多いようで、コメントの節々から、ミュージシャンたちへの感謝が感じとれる。途中、自身のTwitterを閉鎖したことについて、「僕にはもう、書き込みされる場所はありません。またmixiからやり直そうと思います」とジョーク混じりに語る。だからこそ、「今ここにいる生の自分を見てほしい」という意気込みも伝わってくる。
その後、錦織に「長めの上着ー!」と茶化されて登場した植草が、近年制作したソロ曲を3曲続けて披露。
スリリングかつ大人の色気がただようポップス、これまでの感謝をつづったバラードに続いて3曲目に歌ったのは、'22年に作った明るくノリのいいミディアム・ポップスの「Sha la la」。観客も左右に腕を振るなどノリノリで、途中、錦織もダンサーに交じって登場! 会場が前のめりに盛り上がったためか、植草が大サビの歌詞を前のめりに間違えて歌うというハプニングまで起きてしまった。
本人はその後、「いい気分になっちゃった……。こんなこと、めったに……あります!」と苦笑いしつつ、何度も悔やんでいたが(このあたりは実にまじめ)、会場はそんなハプニングなど気にならないくらい、楽しい雰囲気で包まれていた。
そして、ここからは錦織のソロコーナー。いずれもカバー曲で構成された。
少年隊の楽曲の多く(特にシングル以外の楽曲)では、植草がメインパートを多めに歌うことで土台をしっかりと支え、錦織はAメロの一部を歌ったりサビでハモったり、とサポートする形がやや多いように感じる。だが、自身のソロコーナーではいずれの曲に関しても、“いまの自分を表現して、伝えたい”という錦織の思いがあふれていた。
そう、植草も錦織も、そして今回は会場にいない東山も、ソロ・アーティストとして確実に前に進んでいるのだ。つまり、今回は“3人それぞれが自分の道を歩んでいる途中で、このふたりが日にち限定のユニットを組んだショー”という感じがした。だからこそ今後、別のふたりによるユニットでのコラボも、さらには、3人でのショーの可能性も感じられた。
錦織が選んだカバー曲は、アップテンポの洋楽曲2曲と、それらのあいだに歌われたのが「青い瞳のステラ」(正確には「青い瞳のステラ、1962年 夏…」、原曲:柳ジョージ)。これは錦織が演劇の世界にどっぷりと浸かるきっかけとなった、つかこうへい氏への哀悼を込めて選曲したのだが、《♪ほめてくれよ しゃがれた声で 芝生の下で眠っていずに》の部分を熱唱する様子は、会場中が何とも言えない寂寥(せきりょう)感に包まれた。この1曲だけでも、つかこうへい氏を錦織がどれほどまでに尊敬し、慕い続けているかが手にとるように伝わってきた。
そして、感動が渦巻く中で植草が戻ってきて、また和やかなトークに戻る。10月20日(木)に公開予定のライブレポートの第2弾では、このあとに続く衝撃(笑撃?)のデュエットや、終演直後に敢行した植草へのミニ・インタビューなどの様子をお届けしたい。お楽しみに!
(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)