日本の代表食の1つである「梅干し」。東京・墨田区の東京スカイツリーの根元に立地している商業施設『東京ソラマチ』には、その梅干しを食べ比べができるお店「立ち喰い梅干し屋」があり、土日は行列ができるほどの人気店になっています。
実は、そのお店を経営している株式会社バンブーカットは、人気落語家・立川志の輔さんのご子息、竹内順平さんが代表取締役を務めているんです。
家に欠かせないほど梅干しが大好きな筆者が、「立ち喰い梅干し屋」で梅の食べ比べ体験をし、竹内さんに梅干しの魅力についてお話を伺ってきました。
辛子明太子、オリーブオイル、キムチ、はちみつ......16種の梅を食べ比べできる
店内は和を基調とした内装で、梅グッズがいろいろと展示されており、カウンターには、選りすぐりの梅干しがずらりと並んでいます。
「梅干し」と一口に言っても、色、形、酸っぱさなど、それぞれ個性があるのですよね。
同店では、全国300以上もの梅干しの中から厳選した梅干しが16種類そろっていて、1粒から楽しめます。
「すごく酸っぱいのを食べてみたいという人が多いので、『すっぱい梅』や『杉田梅』『十郎梅』がよく出ます。あと、『燻製梅』『こんぶ』『オリーブオイル漬』も人気です」(竹内さん)
メニューは、「梅干しとお茶」(495円)、「梅干しとお茶のお酒」(935円)、「絶品梅茶漬け」(715円)などがあり、一番人気は、梅の食べ比べができる「三粒とほうじ茶」(990円)です。
早速、「三粒とほうじ茶」を体験してみました。梅干しは、「みかん梅」「焼き梅」「杉田梅」をチョイス。
珍しい「みかん梅」は、南高梅に紀州名産の温州みかんの果汁をしみ込ませた、低塩仕立ての梅干し。みかんの香りはほんのり感じる程度ですが、酸味が柔らかく、酸っぱいのが苦手な人でも食べられそうです。
逆に、「杉田梅」は、かなり酸っぱいです。塩っ辛いのではなく、梅ならではの酸っぱさなので、コアな梅干しファンも納得のおいしさです。実は、“幻の梅干し”とも呼ばれていて、小田原で育てた無農薬栽培の梅を仕入れ、昔ながらの梅仕事で丁寧に作り上げているそうです。
「焼き梅」は、和歌山県みなべ町で育つ“南高梅”をほんのり甘く味付けし、ひと粒ずつ遠赤外線で丁寧に焼き上げた逸品。まろやかな風味と口当たりで、梅の濃厚な味が際立ちます。
このほか、「オリーブオイル漬」「辛子梅太子」も食べてみました。「オリーブオイル漬」は、南高梅で作られた梅干に、唐辛子やにんにく、バジル、ローリエ、スペイン産のオリーブオイルで漬け込んだ、イタリアン風味。香辛料の香りは強くなく、酸味がマイルドな梅干しでした。
今回食べたもので、個人的にいちばん驚きがあったのは、「辛子梅太子」です。
初めて出合った味でした。辛子とともに漬け込んだ、辛子明太子の梅干し版で、ピリリとした辛みと酸味がマッチしているんです。
お茶は梅干しに合うものを提供
同店は、ほうじ茶にもこだわりがあります。農薬や化学肥料を使用しない自然製法茶を作っている『つきまさ静岡工場』によるお茶なんです。
「つきまさ静岡工場さんに、全種類の梅干しをお渡しして、それぞれの梅に合うお茶を選んでいただきました。お茶は4種類あり、梅干しを単品で頼まれた方には、それに合うお茶をお出ししています。食べ比べのときは、どの梅にも合うほうじ茶をお出ししています」(竹内さん)
梅干しとセットの飲み物は、お茶のほか、茶葉を漬け込んでリキュールにしたお茶のお酒(単品660円~)もあります。「やさしい焙酒」(660円)は、口の中でほうじ茶の香ばしい香りがふわっと広がります。塩気のある梅との相性がよく、お酒がすすみます。
こういう珍しいお店は、好奇心から来店する1回限りのお客様もいますが、同店は「リピーターも多い」とのこと。
「1か月ごとに来ていただくお客様もいて、毎回、違うものを選んで楽しんでいらっしゃいます。最近は、『絶品梅茶漬け』(715円)も人気で、お食事目的で来店する方も増えています」(竹内さん)
オシャレな「梅干しのお土産」がいろいろ
店内には、梅干し関連のお土産もそろっています。小さな瓶に100g(5~6粒)の梅干しを詰めた「立ち喰い梅干し屋のまかない瓶」(918円~)や、「日の丸弁当レターセット」(660円)といった梅干しをモチーフにしたグッズもあり、“梅づくし”です。
『備え梅』は、2016年の熊本地震をきっかけに生まれた商品。竹内さんがこのために防災士の資格を取り、防災品として作ったそうです。
「震災のとき、よだれが出なくなった子どもが、避難所などで感染症にかかってしまうケースがあったという話を聞いたんです。もし梅干しがあれば、すぐによだれがでるのに、なぜ防災バッグの中に梅干しが入っていないんだ、と思って『備え梅』を作りました。
これは、人にプレゼントする方が多いんです。“あなたに元気でいてほしい”という気持ちであげてくださっているようで、すてきですよね」(竹内さん)
“あなたの好みの梅干しに出会える梅干し屋”を目指す!
竹内さんにこのお店の特徴や立ち上げた理由などを伺いました。
──お店のコンセプトは何でしょうか?
「お店のキャッチコピーは、“たかが梅干し、されど梅干し”です。僕は東京生まれ東京育ちで、それまでは“おいしいものは、たいてい東京に集まってきている”と思っていたのですが、梅干しは、そうではなかったんです。
8年前、25歳のときに紀州に行って、色々な梅干し農家さんに会ったときに、“最近の若者の梅干し離れが……”という話を聞きました。でも、そう言う割には、“これ、どこに売っているんですか?”というものばかりで、そもそも離れる以前に“出合っていなかった”んです。
それで、“あなたの好みの梅干しに出合える場所”というコンセプトで、『立ち喰い梅干し屋』をオープンさせました」
──確かに、一般の人が梅干しを買うお店はスーパーが多いし、スーパーに卸(おろ)せる梅干し業者は限られるので、いろいろな梅干しに出合いにくいところはありますよね。
「当時、梅干し業者の方々に商品を見せてもらうと、最低20粒からくらいの大きいパックでしか売られていなかったんです。
僕たちも初めはそういう商品を仕入れて、梅干しのイベントに来てくださったお客さんたちに販売していました。でも、大きいパックだと買いにくいんですよね。お客さんは、“気に入ったものは全部買いたい”くらいの気持ちになってくださっているのに。
それで、梅干し業者の方々に、5、6粒入りの瓶詰めを提案し、商品化しました。さらに、『ウメボシカルタ』は1粒入りです。お客様から “食べ比べたいから、1粒がいい”というお声をたくさんいただいたので、作りました」
──これだけの種類の梅がそろっていたら、食べ比べたいし、“自分好みの梅”と出合いたくなりますよね。竹内さんが梅干しに惹(ひ)かれる理由は何ですか?
「いい意味での“あいまいさ”があるところです。いろいろな説はありますが、梅酢が調味料の基本だと言われていた時代があって、梅酢が欲しくて梅干しを漬けていたこともあるくらいなんです。その塩と梅のバランスを“塩梅”と言っていたそうです。
“ちょうどいい感じ”って、日本文化の象徴ですよね。僕にとっては“あいまい”もいい言葉だと思っていて。デジタルの社会になると、白か黒かの判断になりがちなのですが、“これくらいでいいんじゃない?”“ちょうどいい塩梅”という、あいまいの文化が凝縮されているのが、梅干しだと思うんです。
それに、梅干しそのものが可愛いんです。見た目も、それにかかわる人たちも」
──お客様からは、どんな声が寄せられますか?
「“梅干しってこんなにおいしかったんだ”という声が多いです。若いお客様から“梅干し、やばっ!(※美味しいという意味)”と言われると、うれしいです(笑)」
◇ ◇ ◇
今までにありそうでなかった飲食型の梅干し専門店。店内は和テイストでありながらも、エッジの利いたオシャレ感があり、竹内さんたちのセンスが光っています。そういう“イマドキの魅力”が、若者たちを梅干しと出合わせるのだと感じました。
では、立川志の輔さんの息子さんが、なぜ、起業して、「立ち喰い梅干し屋」をオープンさせたのか。後半で竹内さんのこれまでの経緯について深掘りします。
【第2弾記事:「立ち喰い梅干し屋」竹内順平さん。落語家の父、立川志の輔さんの教育、「ほぼ日」で学び起業した理由】
※記事内表示価格はすべて税込み
(取材・文/加藤弓子)
■立ち喰い梅干し屋
東京都墨田区押上1-1-2 東京ソラマチ 4F
電話番号:03-5809-7890
営業時間:[月~日]10:00~21:00
年中無休
https://tachigui-ume.jp/
【PROFILE】
◎竹内順平(たけうち・じゅんぺい) 1989年10月17日生まれ。株式会社バンブーカット代表取締役。
梅干しの魅力にひかれ、全国300種類以上の梅干しを食べ歩きながら、その魅力を伝えるイベントを企画し、日本各地やフランスでも開催。現在、「立ち喰い梅干し屋」のほか、浅草に炊き立ての羽釜ごはんと梅干し、ごはんのおともを頬張れるお店「梅と星」(https://ume-hoshi.jp/)を経営している。