コロナ禍は“引きこもり”に! 今年はジャズ歌手デビューの夢も叶えた

──コロナ禍で多くの舞台が中止になりましたが、その間はどのように過ごしていましたか?

“本来ならこの時期は舞台をやっている。だから、千秋楽の予定だった日が終わるまでは……”と、一歩も外に出なかった時期もあったんです。家にこもっていたので、ちょっと大きくなっちゃった(笑)。舞台の直前になって、戻そうとしているんですが、ダイエットしながらハードな稽古というのが、もうキツくて。すごくお腹がすくんですよ(笑)。

 昨日もひとりでオープニングのところだけ“おさらい会”をやっていたんですが、振付の先生から“かなり厳しいかもね、体重は落として体力をつけてください”と。体力づくりに関しては、とにかく外食をしないことを心がけて毎食、自炊しています。カロリーの少ないキノコ鍋で満腹感を得て、稽古に取り組むしかないです(笑)」

──レシピ本を出しているくらい料理がお得意ですから、その点は心配ないですね。

そうなんです、ラッキーにも。自分の作った食事で栄養管理をしながら、体力づくりもすることを目指しています。あとはジムですね。トレーナーをつけて毎日やらないと。なんせ、重いもんですから。やせるサプリメントなんかもネット通販でいろいろ買っているんですけど、私には合わないみたいで(笑)」

──この作品が長く愛されている理由は何だと思いますか?

場違いなところに飛び込んで異質な存在だったデロリスが、反発し合いながらも、まっすぐで純粋なシスターたちと心をひとつにしていく。その過程でみんながそれぞれ成長していく。そんな姿に共感してもらえるのでしょうね。

 初めは、修道女たちの歌がありえないくらい下手なんですよ。そこから紆余曲折を経て上達していき、最高のコーラスが生み出される。その瞬間、客席全体が湧き上がって拍手喝采となるんです。たとえストーリーを知らなくても、そこにみなさん、涙を流すほど感動してくださる。

 いろいろなミュージカルをやってきましたが、どんな作品でも、“なんで突然歌い出すの”という不自然さはどうしてもあるんです。この作品に限っては、主役がクラブ歌手なので、いきなり歌い始めても、観る方も違和感なくすんなり入ってきますし、ストーリーの中に歌が自然に組み込まれていて、初心者にも受け入れやすいミュージカルなんですね。ゴスペル、聖歌、ソウル、ロカビリーと多彩な曲で構成されているところも楽しめるのではないでしょうか」

デロリスとシスターたちが高らかに歌い上げる名曲の数々は圧巻! 写真/東宝演劇部

──舞台でも多種多様な歌を披露してきましたが、今年は舞台出演のかたわら、念願のジャズ歌手としてのデビューを飾ったそうですね。

「ジャズギタリストの第一人者・吉田次郎さんのプロデュースで、ジャズ歌手として活動を始めました。『ブルーノート東京』でスタンダードジャズを歌わせていただきましたが、長いキャリアの中でも、オールジャズのセットリストは初めてなんです。14歳のとき、サラ・ヴォーンに憧れてジャズ歌手になりたいと思った夢が、63歳にしてやっと叶(かな)った。“一生できないかも”と半ば諦めていたので、“やればできるんだな”と感慨深いです

──歌手になろうと思った特別なきっかけはあったのですか?

「昔、フジテレビの人気テレビ番組だった『日清ちびっこのどじまん』に出て、森山加代子さんの『白い蝶のサンバ』を歌いました。審査員に“あなた、この歌詞の意味わかってるの?”と聞かれて、“おおよそ”と答えたら大爆笑になって全国大会で入賞しました。そこからですかね、歌手になりたいと思ったのは。

 中学生でサラ・ヴォーンを聞いて衝撃を受け、歌の勉強をしたいと親に伝えたら、母から“まず基礎を学びなさい”と言われて、大学ではクラシックの声楽科に進むことにしました。そのころは、ジャズの専門学校なんてない時代ですから。その後、ニューヨークのジュリアード音楽院やミラノにも留学しました。音楽はなんでも好きだから、特にジャンルは問わないんです。今はオペラの舞台でも歌っていますが、技術のベースがあるからミュージカルでもジャズでも、なんでもできたのかなと。基本的なクラシックの勉強をしておきなさいという母のアドバイスは的確でしたね。そのときの選択に感謝しています