「ENJOY」に込めた思い

──ハワイでは「他者を認めて共存する」という考え方が自然とできているのに、どうしたら日本でもできるのかなと考えてしまいました。

 やっぱり教育も大きな要素なのかなと思います。厳密にいえばアイヌの方などもいらっしゃるのですが、日本はもともと多様な人種や文化背景を持った人たちがともに暮らしていたわけではないですし、学校教育ではみんなが同じであることが求められたり大事にされたりしているので。

 もちろん、その中で生まれたよさもありますが、今はどんどん世界が変わっていて、同じ日本人の中でも違った考え方や生き方を選びたい人たちがいるので、どうしてもそこからはじき出されて、苦しくなってしまう人たちがいます。ハワイの場合は、否が応でも違う人だらけの環境なので、たとえ他人に受け入れられなくても、それを攻撃の理由にはせずに、それぞれの場所で認め合ってともに生きてくという考えが育まれて、今のハワイの心地よさになっているのかなと思いました。

『山とハワイ』下巻の「おわりに」の一コマ。「アロハ」の意味を伝えています 鈴木さん提供

──私も一度ハワイに行ったことがあるのですが、いい意味で周りの人のことを気にしないし、他人にも「自由に楽しんで!」という思いがある人たちが多いなという印象があります。

 特にハワイ島にあるヒロという街の人たちから、とても温かい時間をもらいました。山ですれ違うハイカーさんたちの格好も自由。日本では“山登り”って言ったら、長袖・長ズボンという服装の方が多いですが、あちらでは水着みたいな格好の人や、中には“裸か!?”という人もいて(笑)、すれ違う人みんな“ENJOY!”って笑顔で言ってくれるんです。

 私はサインを書くときに、いつも“ENJOY!”という言葉を添えるのですが、そのときにいつも願っていることは、みんなが堂々と自分らしく、そして人の違いを尊重するような世の中になってほしいし、そういう人たちがもっと増えてほしいなということ。その思いは年を重ねるごとに増していきますね。