家族の支えに感謝。AI化が進む中、「だからこそ舞台芸術が求められていくはず」
──ご家族で舞台を楽しむこともありますか? 途切れなく舞台に出演していらして、仕事と子育ての両立も大変ではないかと思いますが。
「子どもはまだ小さいのですが、『メリー・ポピンズ』で初めて私の舞台を観たんです。私が女優だということも、もちろんまだ意識していないのですが、喜んでくれていました。主人は、結婚前は劇場に行ったこともないタイプで、私が俳優という仕事をしていることも、あまりよくわかってなかったくらいだったんです。初めて私の舞台を観にきてくれたのが帝国劇場で上演していた『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役でした。“すごい劇場に立っている女優さんだったんだね!”と驚かれました。以来、ずっと応援してくれているし、出演する舞台は必ず観にきて感想を述べるぐらい演劇を好きになってくれました。今では、ダブルキャストで演じることがあると、もう片方の役者さんのバージョンも、自分でチケットを取って観てくれます。プロとは違う意見を言ってくれるのが新鮮で、彼の感想がとても参考になっています。
子育てと仕事の両立も、家族の協力に助けられています。稽古などは何時に終わるかもわからないですし、サポートしてくれる人たちがいるからこそ成り立っています。今後も無理のないスケジュールで舞台と両立していきたいです」
──このところ、日本ではミュージカルの舞台が多いのですが、お子さんもいずれ役者の道を目指すのではないでしょうか。
「私が『ピーターパン』をやっていたころは、それほどミュージカルを上演していませんでしたが、そのころに比べると今は多くの作品が上演されています。気軽にミュージカルを観に行けるようになりましたよね。いろいろな仕事がAIでできるようになってきましたが、AIでは絶対に人の心を動かせない、こういう時代だからこそ、舞台芸術が求められていくのだろうと考えています。ただ、子どもが同じ世界に入りたいと望んでも、積極的にすすめられないかもしれません。私は、“つらい茨(いばら)の道”、と母に言われ続けてきましたが、まさにそういう感じですから。もちろん、いろいろなことを経験して、最終的にその中で演劇を志望するのであれば応援します。今回の舞台も観にきてもらいたいですね。
『東京ラブストーリー』は、音楽がわかりやすいので、年代を問わず物語に入っていきやすいはずです。誰もが共感できるストーリーや、聴きどころも満載の音楽を楽しみに、ぜひ、劇場にいらしていただければと思います」
(取材・文/Miki D'Angelo Yamashita)
【PROFILE】
笹本玲奈(ささもと・れな) ◎女優。1985年6月15日生まれ。O型。'98年に舞台『ピーターパン』で5代目ピーターパンを演じて主演デビュー。'07年に『第32回菊田一夫演劇賞』演劇賞、'08年に『第15回読売演劇大賞』優秀女優賞・杉村春子賞を受賞。その他、舞台『レ・ミゼラブル』、『ミス・サイゴン』などに出演。'22年は『メリー・ポピンズ』に主演したほか、11月27日からは『東京ラブストーリー』に出演。'23年3月より『ジキル&ハイド』に出演予定。
2022年11月27日〜12月18日@東京建物 Brillia HALL
原作:柴門ふみ/音楽:ジェイソン・ハウランド/脚本・歌詞:佐藤万里/演出:豊田めぐみ
キャスト:柿澤勇人、笹本玲奈、廣瀬友祐、夢咲ねね、濱田龍臣、唯月ふうか、増子敦貴、熊谷彩春(以上8名、チーム別ダブルキャスト)、綺咲愛里、高島礼子ほか
※公演詳細やチケット情報はホリプロ公式HPへ→https://horipro-stage.jp/stage/love2022/