B面とアルバム曲も奮闘、「桜の闇に振り向けば」の再生回数は驚異の伸び率!

 そして18位には、'84年のシングル「コントロール」のB面、および同時発売のアルバム『Summer Delicacy』にも収録の「夏の日の恋」がランクイン。表中の「★」マークは、筆者もプロジェクトにかかわっている大人向けプレイリスト“おとラボ”に選曲されたことで、5000~1万回の再生数が上乗せされたものにつけているが、この「夏の日の恋」は、もともと国内外のシティポップ・ブームで5000回ほど再生されており、そこに“おとラボ”から飛び火して 、さまざまな夏歌系プレイリストに本作が組み込まれた結果、'22年のひと夏だけで3万回ほど増加し、なんとシングル上位に交じって18位となった

『夏うた! 懐かしく新しい名曲満載・昭和ポップス【おとラボ】』(「夏の日の恋」収録)
https://open.spotify.com/playlist/03gNFt0DRXh3X7DFWcfMZ4

ソ「『夏の日の恋』は、カッコいいですよね! 八神純子さんのシングル『Mr.ブルー~私の地球』B面のカバーですが、雰囲気がまったく違っていて、奈保子バージョンはスピーディー。このころは歌唱力もフルパワーになっていて、声質もややタフで低くなり、ドスが効いているのです。特に、ラストのロングトーンが最高! 僕はこの曲の歌詞で、ターコイズブルーという色を知りました」

「音楽ユニット『星屑スキャット』の楽曲『波の数だけターコイズ』は、このあたりが影響しているのかもしれないね~」

「そういえば、以前、(『星屑スキャット』メンバーの)ミッツ(・マングローブ)さんと街角で偶然会ったとき、向こうから ♪Fly Me To Love~(河合奈保子のヒット曲『デビュー』の歌詞)って歌いながら近づいてきましたよ(笑)」

 そのほか、“おとラボ”の選曲を発端に大きく伸びたものは、28位「桜の闇に振り向けば」33位「Dear John」(別れを決意して旅立つ女性を描いた自作曲バラード)、37位「太陽の下のストレンジャー」(奈保子楽曲の中で最速級のアッパーチューン)、39位「星になるまで -NIGHT AFTER NIGHT- 」(泣きのサックスにも負けじとさまざまな熱唱スタイルを見せるラブ・バラード)、43位「こわれたオルゴール」少女から女性への旅立ちを繊細な歌唱で描いたバラード)などのアルバム曲。キッカケさえあれば、そのよさが突如として浸透するというのもサブスク時代ならではで、奈保子の楽曲は、その可能性を大きく秘めていることがわかる。

 特に大きく伸びたのが、自作曲アルバム第2弾の『JAPAN-as waterscapes-』に収録された「桜の闇に振り向けば」で、こちらは数々の“さくらソング”系のプレイリストに飛び火して、通常の2、3倍の勢いで再生回数が伸びている。これは、前述のファン投票企画ベスト『私が好きな河合奈保子』でもカップリング曲&アルバム部門で3位と大人気。全体的には和の雰囲気をまといつつ、どこかスペクタルな情景を感じさせる演奏の中で、奈保子が気品を保ちながらも時に激しく、時に切なく使い分けた歌声が印象的だ。

『さくらソング・ストーリー~愛しい春!切ない春。【おとラボ】』(「桜の闇に振り向けば」収録)
https://open.spotify.com/playlist/1NILyznBVdEbOQCWyY0MWO

ソ「これがリクエスト3位だったとき、誰かの組織票では? と疑ってしまうほどに驚きました! 確かに、マイナーコードかつロックな感じもする曲でカッコいいので、個人的には好きなんですが、コアなファンの方も好きだったなんて。このアルバムは、楽曲ごとにイメージした日本全国の場所があって、この曲は京都でしたよね。さくらソングゆえにプレイリスト映えしやすい効果もあるんですかね……じゃあ、岡本舞子の『桜吹雪クライマックス』も上位ですか?」

 改めて調べたところ、「桜吹雪クライマックス」(作詞:阿久悠、作曲・編曲:山川恵津子)は、総再生回数が約2万回と、アルバム曲ながら岡本舞子の中では再生回数第5位だった。なお、こちらも余談だが、'89年ごろの調布市の街中で貼られていた特大ポスターが、なぜか(?)ソワレが経営する新宿ゴールデン街のスナック『ソワレ』にも貼られているので(笑)、来店時にはチェックしてほしい。

新宿ゴールデン街にある『ソワレ』の前にて。店内には珍しい河合奈保子グッズも! 撮影/近藤陽介