'22年のリリース作も続々と話題に! ふたりが考える“奈保子ならではの魅力”とは
では、ここからは、'22年後半から'23年にかけて奈保子作品のパッケージのリリースが続いているので、衛藤ディレクターにご説明いただくことにする。まず、'22年9月に、大村雅朗がアレンジを手がけた楽曲を集めた2枚組CD『Masaaki Omura Works~大村雅朗作品集~』がリリースとなり、なんと32年ぶりに奈保子作品がオリコンのアルバム週間ランキングのTOP100に登場する快挙となった。
衛「予想外に反響があってビックリしました! もともとは『大村雅朗25th メモリアルスーパーライブ』という彼をトリビュートするコンサートがあるので、連動しませんか、とお誘いがあって、CDを出すことになったんですよ。たくさんの方に聴いていただけたので、また次の企画も考えようと思っています」
続く'22年11月23日には、Spotifyでも人気の『Sky Park』『Summer Delicacy』をはじめ『スターダスト・ガーデン-千・年・庭・園-』『Scarlet』の4作が高音質のSACDで発売された。ちなみに、この4作とも発売日のオリコンのデイリーチャートでTOP50入りしている。
衛「今回は、毎回タワーレコードさんが4作ずつ選んでくださっている奈保子のSACD化第3弾で、これでSACD化は12作になります。マスタリングに関しては、ミキサーズ・ラボの内沼映二さんに監修をしていただいてます」
そして、'22年12月3日には、アナログレコードとして『COLLECTION Vol.1 1980~1984』『COLLECTION Vol.2 1985~1993』のベスト盤2作も発売。特にVol.2には「悲しみのアニバァサリー〜Come again〜」「言葉はいらない〜Beyond The Words〜」の2曲がアナログ盤初収録となる。
衛「これは、発売日当日の“レコードの日”に合わせてのリリースです。LPにもベスト盤はあったのですが、それだと初期楽曲に集中してしまうので、今回は新たな編成で企画しました。カラーレーベルで、ジャケットもLPだから大きいし新鮮ですよ。予約も好評です(実際、この取材後のオリコンでは、2作とも発売当日のアルバムデイリーで前者が18位、後者が26位にランクインした)。さらに、'23年1月25日には、ライブアルバム4作がタワーレコード限定でSACD化されます。オリジナルは、あと6作のフルアルバムが残っていますが、ライブ盤はこれで完結しますね」
パッケージ復刻や新編成ベストなど数多くの奈保子企画に携わってきた衛藤氏からも、奈保子の魅力やエピソードを語ってもらった。
衛「やっぱり、奈保子さんは癒しの声だよね~。決してテクニックに走らず、聴き心地がいいから癒されるんです。好きな曲は、シングルだと『ムーンライト・キッス』……これは、個人的な思い出があるんです。東京12チャンネル(現在のテレビ東京)に『ザ・ヤングベストテン』という番組があって、Aチームがシブがき隊、Bチームが少年隊の前身となるヒガシ(東山紀之さん)加入前のジャニーズ少年隊の2チームに分かれて司会をしていたんです。ある放送回に奈保子さんが出る予定だったんだけど、“急きょ事故に遭われたので、僕たちが歌います”と言って彼らが『ムーンライト・キッス』を歌ったんですよ。それを買ったばかりのビデオに録画していたので印象深くて、当時から好きだったんでしょうね。
その後、学校が休みだった埼玉県民の日(11月14日)に、情報番組『おはようスタジオ』の観覧ついでに出待ちをしたら、偶然『ヤンヤン歌うスタジオ』の出演者もスタジオ入りしてきたんですよ。いろんなアイドルが入っていく中で、奈保子さんは、階段を上がったところでこちら側におじぎをしてから入っていくのを見て、本当に育ちがいい人なんだなと思いました。それと、自分が新入社員のとき、階段を昇ろうとしたら、奈保子さんが取材で写真撮影をしているのに出くわして、邪魔になるかなと思って待っていたら、ご本人が撮影を止めて“どうぞ~”って道を開けてくれました。ここでも、“いい人だなぁ~”ってうれしくなった記憶がありますね」
これまでの復刻作品でも、竹内まりや、作詞家の売野雅勇、吉元由美など、ゆかりのある人々からエピソードが語られるたびに、人柄のよさが言及されてきたが、ここでのエピソードもまったく矛盾していない。最後に、偶然(!)、東京の街角で2度も奈保子と遭遇したというソワレに、彼女の魅力を総括してもらった。
ソ「奈保子さんの楽曲を聴いていると、歌手にとって、やはり歌がうまいということが大切なんだと改めて気づかされます。ストリーミングでは、これだけたくさんの楽曲が聴けるわけですから、ランダムでもいいし、ダラダラしながらでもいいし、聴けばきっとあなたの好きな奈保子作品に出合えます! 奈保子さんは、本当にいろんなタイプの曲を、いろんな表情で歌っているので。当時の作家による美しいメロディーラインに、奈保子さんのきれいな日本語がのっているし、間違いなく再発見があると思います」
なお、ソワレからは、“まだまだ大変な状況が続くライブハウスですが、みなさんに喜んでもらえるよう精いっぱい頑張りますので、12月の『歌舞伎町シャンソンフェスティバル』にぜひいらしてください!”とのメッセージもいただいた。
確かに、Spotifyなど音楽ストリーミングサービスの多くは、基本的に音だけで楽しむことになる。それは奈保子に限らず、ビジュアルで勝負をするアイドル出身の歌手にとっては魅力が伝わりづらい手段でもあり、だからこそ“昔の歌謡曲を楽しむときは、動画サイトに投稿された音楽番組の映像で十分”という意見があるのも、わからなくもない。
しかし、ビジュアル抜きの音楽だからこそ、シンガーやソングライターとしての河合奈保子の素養に、より深く迫れるのではないだろうか。ストリーミングには、歌番組ではなかなか歌われないシングルのカップリングやアルバム収録曲もほぼ網羅されているし、何よりその完成度の高さはプロであるソワレのお墨付きだ。もちろん、よりコアなファンの方はパッケージを購入したほうが、著作権者であるアーティストもレコード会社も潤うだろうが、まずは先入観なしでさまざまな楽曲を聴いてみたらどうだろうか。きっと新たな河合奈保子像、ひいては、それを発見しうる豊かな感性を持ったあなた自身に出会えるはずだ。
(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)
【PROFILE】
ソワレ ◎シャンソン歌手。シャンソンに精通しCD作品などの監修やシャンソン歌手の育成に取り組むかたわら、イベントプロデュースや新宿界隈の飲食店のオーナーも務める。越路吹雪に多大なる影響を受け、作品解説や監修も手がけている。また、河合奈保子の大ファンでトリビュートライブを行うほか、ベスト盤『しんぐる・これくしょん』の解説、アルバムコンプリートBOX『Naoko Premium』『Naoko Live Premium』『ゴールデン☆ベスト』の制作協力と解説も担当。
2022.12/9〜12/26@東新宿Petit MOA、入場料4300円(1ドリンク制)
イベント詳細やチケット情報はソワレ公式Twitterをチェック!
◎ソワレ公式HP→https://soiree.in/
◎ソワレ公式Twitter→@soireetoile
・タワーレコード限定SACD/CD ハイブリッド盤『スカイ・パーク』『サマー・デリカシー』『スターダスト・ガーデン千・年・庭・園― (+1)』『スカーレット(+4)』2022.11/23リリース!
・アナログレコード『COLLECTION Vol.1 1980~1984』『COLLECTION Vol.2 1985~1993』2022.12/3リリース!
・タワーレコード限定SACD/CD ハイブリッド盤『LIVE(+5)』『NAOKO IN CONCERT(+2)』『ブリリアント<レディ奈保子 イン・コンサート>(+2)』『NAOKO THANKSGIVING PARTY (2枚組)』2023.1/25リリース!