50代のリアルなおとこを演じるために、あえて「しないこと」

 進化し続けるタフな本作を演じ抜くために、何か日々コツコツと積み重ねている努力はあるか、聞いてみた。

「この舞台だからと特別なことはしていませんが、普段から体調管理は当然意識しています。役者って結構大変な仕事で、朝早くから夜遅くまで撮影したりね、最近は減ってきましたけど、全力疾走のシーンをずっと撮ったりすることだってありますし。……だからってじゃあ、何かトレーニングをしてるかって言ったら、していないんだけど。

 なぜしないかって理由があって、やっぱりこの年齢の一人の男として役を演じるわけだから、めちゃめちゃキレキレの動きをしていたらそれはおかしいじゃないですか。身体つきがめちゃマッチョっていうのも変だし。うだつの上がらないサラリーマン役とか演(や)るときに、ちょっとお腹とかがボテッとしているほうが、それらしい。だから、あんまりトレーニングはやらないようにしています(笑)」

「フィジカル面だと食べ物には気を遣っています。プロテインと甘酒を毎日摂っていますよ」 撮影/渡邉智裕

「逆もあって、僕はあんまり痩せるとすごく病的になってしまうので、痩せないように気をつけたりね。

 だんだん歳をとってきて、自分のぷにぷにのお腹とか見るとウワァ! って思うし、本当はなくしたいんだけど、でもこれが確かに実年齢のリアルな身体だよなぁとも思うから、そのせめぎ合いですよね。

 俺はインフルエンサーじゃなくて役者だから。身体づくりもその一環と思って、日々模索しています」

『おとこたち』の公演は、東京会場だけでも丸3週間続く。超のつくハードな公演期間を乗り切るには、体力はもちろんのこと、強靭(きょうじん)な精神力も必要になるという。

芝居ってつまりは想像力。例えば人殺しの役を演じることだってあります。人殺したことないのに。それでも、もし俺が人を殺すとしたらこんな感じかな? って、病まない程度に想像しながら演じるわけですよ。そんなふうに想像力をフルに使って、日々役者をやっているんですね。

 舞台に入ると1日2公演とか、5時間くらいを張りつめた状態で、たくさんの方々を前にしてやるわけでしょ。やっぱりけっこう削られるものがあるんですよ。それに耐えうる精神力っていうのは必要だと思います。俺にはないですけど」

「『おとこたち』の初日は俺の誕生日なんですよ」と嬉しそうに話してくれた 撮影/渡邉智裕

だから、ネットでエゴサーチとかはあんまりしないようにしてます。絶対に自分のことをボロクソに書いている人がいるだろうから(笑)。そんなの見て鬱々(うつうつ)としたくないので……。自分のことを褒めちぎっている投稿だけをまとめてスクショしてくれ! って感じです。それを見て、いい気分で舞台を演じ切りたいですね」