「男と女の破片」のヒットで「ここからひとりでもやっていけると安心できた」
そして、ランキング上位に戻ると、5位には'91年のシングル「男と女の破片(かけら)」がランクイン。オリコン最高61位ながら半年以上にわたってTOP100内にチャートインし、累計11万枚以上と、前川のソロ時代では最高のセールスとなっている(なお、当時のオリコン調べによる売上枚数はTOP100のみの数字で、こうしたロングヒットの場合、実際にはそれを大きく上回ることも多い)。
作詞は、テレサ・テンの一連のヒットを手がけた荒木とよひさが担当し、作曲は後に中西保志の「最後の雨」や、郷ひろみの「言えないよ」を手がけた都志見隆が担当。「最後の雨」「言えないよ」は、いずれもアーバンな香りのするカラオケの定番曲として今も歌い継がれているが、この路線の最初のヒット曲は、前川の「男と女の破片」と言えるだろう。
「この『男と女の破片』は僕にとっても、『長崎は今日も雨だった』のような位置づけの歌なんですよ。つまり、クール・ファイブから離れ、ソロになって、“ああ、もうヒット曲は出ないんだろうな“と思っていたところ、この歌が初めて大きなヒットになったという認識で、ここからひとりでもやっていけると安心させてくれた、とってもありがたい歌なんです」
しかも、そのヒットを実感したのはコンサートでの観客の反応だったと言う。
「これは不思議な曲で、お客さんが参加してくれる初めての曲だったんです。というのは、♪愛が涙の破片(かけら)に~、って僕が歌うと、客席から“パパン!”と、すかさず合いの手が入るんです。最初、僕が歌っている最中にみなさんがやりだして、何事!? と驚きました(笑)。今でもこの曲で、パパン!と反射的に手を叩いてしまって、周りを見渡しては“あれ、自分だけ……?“って手を引っ込めてしまうお客様もいらっしゃいます。歌っている途中だから言えないけれど、“自由にやっていいですよ~”ってお声がけしたくなります。それだけカラオケ参加型のヒット曲なんでしょうね」
確かに、'80年代後半から、アン・ルイス「あゝ無情」や、中森明菜「DESIRE -情熱-」など、周囲からの合いの手が入るカラオケ定番曲が増えている。
それにしても、テレビ番組では、長崎の方言を交えた気さくで三枚目なトークの多い前川だが、音楽についてのエピソードが非常に多く、また、それぞれの楽曲に対する思い入れもとても強くて、改めて驚かされる。もちろん、これだけの音楽実績を考えれば、それは当然のことなのだが、あまりに自然体のキャラクターなので、ついわれわれが忘れてしまうのだ。インタビュー第2弾以降は、カバー曲や近年の話題曲についても触れてみたい。
(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)
【PROFILE】
前川清(まえかわ・きよし) ◎演歌歌手。1948年8月19日生まれ、長崎県佐世保市出身。1969年にグループ『内山田洋とクール・ファイブ』のメインボーカルとして、シングル「長崎は今日も雨だった」でデビュー。「噂の女」「そして、神戸」「東京砂漠」などのヒット作を多数リリースする。'87年よりソロ活動をスタートし、シングル「男と女の破片」がヒットを記録。'02年には福山雅治プロデュースによる「ひまわり」、'17年には加山雄三作曲「嘘よ」をリリース。歌手活動以外にも舞台・テレビ番組への出演など、幅広く活動を続けている。
前川清の芸能生活も55周年目に突入。
本作品は、盟友である、同じ長崎県出身のさだまさしが楽曲を提供した意欲作!
◎前川清オフィシャルHP「前川清にゾッコン!」→https://maekiyo.com/
◎前川清公式YouTube「前川ちゃんねる」→https://www.youtube.com/channel/UCsE_YLa-s_PLNj6KHDa02Kw
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