早期トップ就任に非難の声が上がるも、仲間たちの励ましが大きなエネルギーに
8年目で全国ツアーの主演をさせていただき、その次の公演では2番手のポジションに立つことになりました。「男役の芸を身につけるには10年かかる」といわれていますので、まだ男役として勉強中だった私には、厳しい試練でした。
私が2番手だったのは、龍真咲さんの退団公演1作だけで、その後にトップ就任となりました。9年目という早い段階でトップに、とお話をいただいたときは、自分の実力もファンの数も追いついていないことがわかっていたので、素直に喜べませんでした。やはり、「納得がいかない」という声が多々ありました。予想できたことでしたし、私自身、そのタイミングでトップになることがふさわしいとは思えませんでした。
それでも、劇団からトップ就任を言いわたされた以上、腹を括(くく)るしかない。月組内では、上級生の方も「たまちゃんだと思ってた」と言って応援してくださり、下級生も喜んでくれたのが、本当にありがたかった。外からどんなに非難されても、組の人たちが前向きに考えてくれているとわかり、なんとかエネルギーが湧いてきたんです。とにかくお客さまに喜んでいただける舞台を月組のみんなと作り上げようと思い、そのために自分にできることは何なのかを考え、精進する日々でした。
舞台に立つうえでいちばん大切にしていたのは、男役としてだけではなく、人間としての品格です。どんなに怒ったり泣いたり叫んだりしても、表情が崩れすぎないこと。どの瞬間を切り取っても美しく見せなければならない。芝居のときも歌っているときも踊っているときも、それを意識していました。芝居では、どうしたら心情の変化がお客さまに伝わるかを考えて、目線の流れ、顔の角度、手の位置など、男役・タカラジェンヌとしての美学を綿密に計算していました。
大きな試練の数々を乗り越え、周囲にも支えられながら、成長を続けてきた珠城さん。インタビュー第2弾では、退団前後の印象深いエピソードや、主演舞台『マヌエラ』にかける熱い思いを伺います!
(取材・文/Miki D'Angelo Yamashita)
《出演情報》
PARCO PRODUCE 2023 『マヌエラ』
【公演概要】
東京:2023年1月15日(日)~23日(月)@東京建物Brillia HALL
大阪:2023年1月28日(土)~29日(日) @森ノ宮ピロティホール
福岡:2023年1月31日(火) @北九州芸術劇場 大ホール
【スタッフ】
脚本:鎌田敏夫/演出:千葉哲也/音楽:玉麻尚一/振付:本間憲一
【キャスト】
珠城りょう、渡辺大、パックン(パックンマックン)、宮崎秋人、千葉哲也、宮川浩
岡田亮輔、齋藤かなこ ほか
※公演詳細やチケット情報→https://stage.parco.jp/program/manuela/