レコーディング中にクラスター発生

──今回、7年ぶりのオリジナルアルバムになりますが、コロナ禍でのレコーディングは今までとどう違いましたか?

実は、レコーディングでバンド内クラスターを起こしまして……(注:2020年12月、綾小路 翔、早乙女 光・DANCE & SCREAM、西園寺 瞳・ギターのメンバー3人がコロナウィルスに罹患)。まだコロナワクチンができる前だったね。でもこれがきっかけで、バンド内でのガイドラインができましたね。感染後は、僕とその日の演奏者とエンジニアさん以外の人はスタジオに来ないようにしたんですよ。“そんな大物ミュージシャンみたいなこと~”って思ったけれど、結構みんなそうらしいね(笑)

──不謹慎ながらも、KISSES(キッシーズ・氣志團ファンの総称)の間ではメンバー同士の仲のよさを喜んでいる感じでしたが……。

うちぐらいじゃないですか、出番がないのに必ずメンバー全員集まってレコーディングしているバンドは(笑)。だからクラスターも起きたんですよね……。光君に至ってはみんなに水を出したり、おやつを用意してくれたりしているからね(笑)

──レコーディングは、数年かかったのですか?

「7年ぶりのニューアルバム! とか宣伝文句になっていますが、単純に7年間干されていだけなんじゃないですかね(笑)。ただ、実際のところ、別にレコーディングをしなくても、タイアップ曲や配信シングルがあったのでアルバムを出せるぐらいのストックがあったんですよ。でも力技で10曲追加レコーディングしましたね」

──今回のアルバムだと『No Rain, No Rainbow』、『今日から俺たちは!!』など、いろいろなカルチャーからのオマージュを感じますが、どのようにアイデアを融合しているのですか?

そもそも僕にはオリジナリティがないんですよ。まったくない。だから影響を受けたものを丸ごと食べて、じっくり消化させて、最終的に排泄したものを材料に作品を作ります。当然お腹の中で食べたもの同士が混じり合ったりもするから、何が出てくるかわからない。そのわからないものをこねくり回していくうちに形ができあがってくる感じ。要するに僕の音楽はうんこアートって事なんですかね(笑)?

──翔さんの書く歌詞の元ネタを探すのも、楽しみのひとつですよね。

僕は80's〜90'sの日本のカルチャーが大好きで、数えきれないほどインスパイアされたものがあります。全身全霊のリスペクトを込めてオマージュした作品もたくさんあります。歌詞やアレンジ、デザインなどに、僕の“好き”をそっと振りかけて、全世界にいる僕と同じ想いを抱く仲間たちへ届け、と願うメッセージのつもりです。ただ、気づかれなくてモヤモヤしているもののほうが断然多いですけどね。メンバー内でも“あれ何なの?”“え! そういう意味だったの?”“20年経って初めて知った!”みたいなことがいっぱいありますしね(笑)」

綾小路 翔さん 撮影/山田智絵

──それは翔さんの知識が、深掘りされたものだからではないですか。

「うーん、どうなんですかね〜。自分的には言うほどマニアックだと思ってない。僕はオタク気質だと思われがちなんですけれど、実はオタクの素養がまったくないんです。狭くて浅い人間。だから自分にとってオタクっていう存在は、永遠の憧れなんです。僕にはどうしたってなれないから。少年少女が世界トップクラスのアスリートや、グローバルスターを夢見るのと同じ気持ち。

 そういえば、人生で初めて挫折を経験したのは小6のころなんだけど、その絶望から救ってくれたのはみうらじゅんと大槻ケンヂ。みうらさんは宝島、大槻さんはラジオ。彼らの物事の見方、捉え方が僕には異次元すぎて。生まれて初めて顔と名前が一致しない状態で人を好きになりました