ヤンキー漫画に登場するなら、あだ名は……?

──翔さんが思う“オタク”は、どのようなタイプの人でしょうか。

「オタクの人たちって本当に何かに没頭すると、どんどん追求していく。周りから“どこ目指しているの?”って言われてからがスタートライン、みたいな。自分の“好き”に忠実で貪欲。アイドルでもアニメでも鉄道でも山でも筋肉でも、何だっていいわけで。昔は変人扱いされることもあったのだろうけど、今や中高生のヒエラルキーではトップの位置にいたりする。僕は好きなことに夢中になっている人、時にどうかしている人が好きなんです」

──「推し活」にしても、夢中になれるほうが幸せみたいな風潮がありますよね。

最近、先輩に“僕はオタクに憧れる非オタクなんです”って話したら、 “翔やんはルポライターなんだよね”って言われたんです。好奇心の塊で、危険とされる場所であろうと興味のある現場には自ら潜入して、ともに生活をすることによって生の声を聴いたり、生態系の観察をする。それを自分の公演や作品に反映してみんなに伝える。ルポライター気質だって言われたんですよ

──確かに外側に向かって、発信する力があるからでしょうね。

「ヤンキー漫画って登場人物にあだ名がついている作品が多いんですけれど、僕が漫画の中にキャラクターとして存在したら、呼ばれるあだ名がわかったんです

──なんでしょうか?

「(ポツリと)カタリベ

──(笑)! 語り部だと脇役になっちゃいますよ。

完全に脇役ですね。だけど、その中でスピンオフになりたいんですよ。後ろ向きな話では全然なくて、氣志團を始めるときに決めたことは、自分が本当になりたかったものを諦めるってことだった。誰もが憧れるヒーロー像があったけれど、それを諦めるところからスタートしたんです

  ◇   ◇   ◇  

 リラックスした表情で、笑いを交えながらレコーディングやアルバムについて語ってくれた翔さん。後編では、翔さんがアマチュア時代にバイト先で出会ったミュージシャンとの思い出、『氣志團万博』の裏側についてお聞きしています。

【後編→氣志團結成から25年、綾小路 翔が語る音楽人生。「ロックの女神に選ばれていない側の人間」と思い知ってからの戦い方

(取材・文/池守りぜね)

氣志團のニューアルバム『THE YANK ROCK HEROES』※記事内の写真をクリックすると、商品の紹介ページにジャンプします

《PROFILE》
綾小路 翔(あやのこうじ・しょう)
1997年に千葉・木更津で結成されたロックバンド「氣志團」のボーカル兼リーダー。2001年にメイジャーデビューを果たし、『One Night Carnival』『スウィンギン・ニッポン』などヒット曲を連発。2012年からは地元の千葉県で大規模な野外イベント「氣志團万博」を主催し、ほかのフェスとは一線を画するラインナップで多くの音楽ファンの支持を集めている。アーティスト活動のほかにも、DJや執筆、プロデュースなど幅広いジャンルで活躍。