福山雅治の作詞・作曲「ひまわり」は100テイク!? 中島みゆきとの思い出も語る
そして、Spotify第12位に福山雅治が作詞・作曲・プロデュースを手がけた「ひまわり」がランクイン。テイチクエンタテインメント移籍後の第1弾ということもあって、本作のヒット(オリコン最高13位)は幸先のいいスタートとなったであろう。
「『ひまわり』は、本当に大変でした。福山先生から、“前川清を消して歌ってください、これまでの前川さんはいりません”と指導されたんです。だから、俺の歌い方のどこを出せばいいのか……と。あれほどレコーディングした経験はありませんね。“これでもか!”っていうくらい歌いましたよ~(苦笑)。それで100回くらい歌ったあとに、“はい、ほぼ大丈夫です”ってOKをいただいて、“ほぼ大丈夫”という言葉を覚えました(笑)。それまでは淡々と、“はい、もう1回いきます”と言われ続けて、何回もレコーディングしました。
でも、全部終わって聴き直してみたら、自分の声の心地よい音というのは、自分では気づかないものだなぁと思い知りました。今までのプロデューサーの方は、みんな“ここのロングトーンで前川節をやってください”というような指導の仕方で、言われたとおり ♪アァアァアァアァアァ~~ とやってきたんです。福山さんは一切それがなかったけれど、ちゃんといいものになっている。彼が言う歌い方にしたら、歌詞がすっと入ってくるんですよ。プロデューサーとしても、本当にすばらしいですね」
そうして「ひまわり」を歌い続けるうちに、新たな発見もあったと言う。
「この歌自体は'02年の作品ですが、東日本大震災のときに、“あの海はそのままですか”という歌詞に共感したという意見をいただきました。いい歌というのは、いろんな場面にあてはまるんですよね。だから、『東京砂漠』にしても、この『ひまわり』にしても、歌詞って大事だなと改めて思います」
ちなみに、福山雅治もこの楽曲を'03年にセルフカバーしており、収録されたシングルはミリオン級のCDヒットとなっている。続いて、第19位に桑田佳祐作詞・作曲の「SEA SIDE WOMAN BLUES」がランクイン。もともと'97年にサザンオールスターズがシングル「01MESSENGER 〜電子狂の詩〜」のカップリング曲として発表していたスローバラードで、前川は'11年に本作をカバーした。歌詞の ♪愛という字は真心(まごころ)で/恋という字にゃ下心(したごころ)~ のあたり、桑田らしいユニークさもありつつ、言葉の並べ方などは歌謡曲にも通じるうまさが光る。
「僕の『SEA SIDE WOMAN BLUES』は、サザンのついでに聴いてもらえたんでしょうね(笑)。桑田さんに曲を作ってほしいなんて言えないと思って、既存の曲の中から選びました。でも、桑田さんは歌謡曲がお好きで、きっとクールファイブのイメージで作られたのでしょうから、(カバーだけれど)まったく自分の歌い方でいけましたね」
さらに、27位には'88年に中島みゆきから提供されたシングル「涙」を、'20年にアルバム『My Favorite Songs V』にて再録音したバージョンがランクイン。ピアノ1本から始まり、終盤に向かって4人のコーラスが重なっていき、失恋が癒されるような曲想になっている。'88年版と'20年版のどちらも、中島みゆきのカラーをさほど出さずに、前川清ならではの“女歌”になっているのが見事だ。
「これもいい歌でしょ? 当時、同じレコード会社にいたご縁で作ってくださったんですよ。中島みゆきさんとは、レコーディングのときに初めてお会いして、終わってから帰りがけに、“へぇ~、こんな風になるのね”って、ひと言だけ(笑)。それ以外は、レコーディング中、何もおっしゃらず、どこを直してくれという注文もなかったので、納得してくれていたんじゃないでしょうか」
ちなみに、中島もその提供から8か月後となる'88年10月にシングル「涙 -Made in tears-」としてセルフカバーしており、こちらは繊細な歌声で、しっかりと中島みゆきの泣かせるバラードとなっている。
インタビュー第2弾は演歌のカバーや、オリジナルでも近年の楽曲やシンガーソングライター系の楽曲など、クール・ファイブ時代から続く、いわゆる“前川清”像とは異なる曲についてのエピソードが中心となったが、ここでも面白い話がてんこ盛りとなった。ラストとなる第3弾では、さらに本人の思い入れの強い楽曲や、2023年1月1日発売の55周年記念シングル「昭和から」について尋ねてみたい。
(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)
【PROFILE】
前川清(まえかわ・きよし) ◎演歌歌手。1948年8月19日生まれ、長崎県佐世保市出身。1969年にグループ『内山田洋とクール・ファイブ』のメインボーカルとして、シングル「長崎は今日も雨だった」でデビュー。「噂の女」「そして、神戸」「東京砂漠」などのヒット作を多数リリースする。'87年よりソロ活動をスタートし、シングル「男と女の破片」がヒットを記録。'02年には福山雅治プロデュースによる「ひまわり」、'17年には加山雄三作曲「嘘よ」をリリース。歌手活動以外にも舞台・テレビ番組への出演など、幅広く活動を続けている。
前川清の芸能生活も55周年目に突入。
本作品は、盟友である、同じ長崎県出身のさだまさしが楽曲を提供した意欲作!
◎前川清オフィシャルHP「前川清にゾッコン!」→https://maekiyo.com/
◎前川清公式YouTube「前川ちゃんねる」→https://www.youtube.com/channel/UCsE_YLa-s_PLNj6KHDa02Kw
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