地方のミニシアターを回って見えたこと
──今回の新作映画では終戦を題材としています。どのようにして企画がスタートしましたか?
「『野火』、『斬、』、そして『KOTOKO』(2012年公開)にもつながる戦争ものです。タイトルがまだないので一応『終戦企画』と呼んでいるのですが、戦争が終わった直後の世界の話です。小さな事象から大きなことが描きたいと思った。今の時代が持つ不安感をやはり強く描いています」
──『野火』上映時には、全国にあるミニシアター40館すべてに挨拶に行かれたそうですが、ミニシアターが閉館したり、苦境に立たされている現状についてどう感じていますか。
「まず僕の映画をずっと上映してくれているのがミニシアターなので、その場所がないと生きていけない。もしもミニシアターがなくなってしまうと、表現の多様性も失ってしまう。マジョリティーな映画は残っても、さまざまなユニークな映画を観る機会がなくなってしまうと思うんです」
──実際に、地方に行かれて見えたことってありますか?
「主要都市では若いお客さんもいたのですが、どうしても地方だと年配の人が多い。若い人がミニシアターで上映される映画にあまり関心がないってことに気づきました。これは大きな問題であり課題だなと感じています。劇場の周りの風景としても、シャッターが下りている店が多いのが印象的でした。休みの日にショッピングモールの中にあるシネコンに映画を観に行くのが、今の娯楽スタイルなんでしょうね。個性的な映画館に行くっていう行為がだいぶ廃(すた)れてきているって危惧しています」
──私が学生のころは情報誌や映画評論家の方の情報をもとに映画を観に行っていましたが、今の世代はどこから情報を手に入れているのでしょうか。
「やはりネットでしょうね。今はそれこそYouTubeですごく流暢(りゅうちょう)に映画紹介をしている動画もありますからね。前は情報をかぎつけるにはちょっと努力をしないといけなかったから、たどり着いたときの喜びも大きかったって思うんです。でも今は“すぐ知りたい”ってことなのかもしれませんね」
──映画作りよりも、手軽に見てもらえるYouTubeで発信している人が増えているように思えます。塚本さんはそれについてどのように感じますか?
「YouTuberのフットワークのよさはすごいですね。動画の映像そのものは、劇場で上映しても耐えられるようなクオリティーで撮っている人が大勢います。カメラが好きな人って、本当に映像のクオリティーにうるさかったりしますからね。『野火』のときに自撮りで撮るぞ、と一大決心をしたこともありましたが、YouTubeでは、ある意味それが当たり前ですからね」
──塚本さんの作品は再上映も多いですが、中でも「極音上映」と呼ばれる大きな音で観られる上映は人気ですよね。
「『鉄男』みたいな作品は、大きな音で観ないと意味がないんですよね。以前はモノラル録音で音の迫力に限度があったので、上映前にも劇場に出向いていましたが、デジタル録音になってからはその必要はなくなってきたんです。でも念のため、できる限り事前に劇場に行っていますけどね」
──塚本さんは、最初に上映されたとき以降の再上映の際にも、よく劇場に登壇されている印象があります。
「それは自分の映画を見てくださるのはとても嬉しいことなので、呼ばれたら行けるときは行きます。自分の映画ですからね。外に出て行くのが好きかっていうと、どちらかというと苦手なので本当に自分の映画の場合は、です。俳優の場合だと『シン・ゴジラ』のような大事な役のときは行かせてもらいますけどね」