クイズは「人間としての力」が試される時代に

──ここまで古川さんの半生をお伺いしましたが、想像以上にクイズ漬けというか(笑)。飽きることはないんですか?

「ないですね。というのも『クイズ』とひと言でいっても楽しみ方はさまざまなんですよ。例えば回答者と出題者でも楽しみは全然違います。クイズの中でも知識量を問うものがあれば推理力を試すものもある。ハマれるポイントはまったく別なんですよね」

──クイズって時代によって「トレンド」もありそうですよね。

「流行(はや)りはあります。最近でいうと、カプリティオが出している『ウミガメのスープ』シリーズがありがたいことに、累計で17万部を突破したんですが、これは“人間としての力”を楽しんでいただけているからヒットしたのかな、と思います」

──「人間としての力」ですか。

「はい。これまでクイズといえば“知識量”を試すものだったんですよね。いかに膨大なデータベースと検索機能が脳内にあるかが重要で、そこが評価されるポイントでした。

 でも今はGoogleの検索窓に打ち込めばいくらでも正確な答えが出てくるじゃないですか。だから正直インターネットが普及したとき、僕は“ヤバい”と思ったんですよ。

 ただそんな中『ウミガメのスープ』は、出題者がオリジナルで答えを作って、回答者はいくつかの質問をしながら推理しつつ相手の考えを探り当てる、というものです。つまりGoogleで検索しても正答が出てこないわけですよ。

 では何が試されるのかというと、知識ではなく“推理力”や“想像力”です。つまりコンピュータではマネできない、人間本来の力が重要になるんですね」

──なるほど……。最近だとAIの流行もありますよね。

「おっしゃるとおりですね。僕はペーパークイズだと、もう人間はAIに勝てないと思っています。でも、耳で聞いて文面を想像する早押しクイズでは人間がまだ優勢だろうと考えていますね。

 以前のクイズ業界といえば“人間の中で物知りマシーンを決める”という性質でした。しかし今は、逆に人間らしさを競うようになっているのが面白いですよね。クイズ業界的には過渡期だと思います。そう考えると、まだまだ飽きないですよ(笑)」

──いやぁ、ワクワクするお話です。最後に古川さんがいちばん「クイズを続けていてよかったなぁ」と思ったことを教えてください。

「周囲とコミュニケーションをとれることだと思いますね。前編でご紹介した小学生のときの“壁クイズ”もそうですが、今でもクイズはコミュニケーションを円滑にするツールだと思います。

 例えば僕はよく初対面の人同士が集まった場で、クイズでアイスブレイクをするんですよ。“好きなものを教えてください”と質問して、その回答に合わせて即興でクイズを作る。すると、その方も得意分野のクイズなので楽しんで取り組んでくれるし、そこから会話が広がります。

 こんな感じでクイズによって人とのコミュニケーションは活性化するんですよね。その結果、周りの方に楽しんでいただけたらやっぱりうれしいです」