と、ここで、少し古い話になるが、あの『ちむどんどん』の話をする。ヒロイン暢子(黒島結菜)の夫・青柳和彦(宮沢氷魚)が新聞記者だった。で、これがまたすごく緩い記者だった。なんせポイントとなる取材が、全部他人頼み。イタリア料理の料理人の取材はイタリア料理店のオーナーのおかげで成功し、沖縄のガマで遺骨収集をしている老人から話を聞けたのも、そのオーナーと上司のおかげだ。言葉遣いは普通に「です・ます」で、今から思えばそれはよかったけれど、それ以外に褒めるところが見つからない。

宮沢氷魚は『ちむどんどん』で新聞記者役を演じた 撮影/高梨俊浩

 その点、御園記者はとても熱心だ。たまたま入ったであろう「うめづ」での会話から、取材を申し込む。「記事になりそう」とひらめいたら、ためらわない記者魂を感じさせる。ネジを作る女性社員から「(爪が汚れていても)マニキュアよりカッコええでしょ」という言葉を引き出すと、「そんなふうに思うんだ。ねえ、何でこの会社に入ったのか、詳しく聞かせて」と続けていた。相手のふとした言葉から話を広げていく。きちんと仕事のできる記者なのだと思う。

 というわけで、誰か御園記者に「言葉遣いは丁寧にね」って教えてほしい、そうすれば、いい記者になるのに。と、心の中で先輩風を吹かせていたのだが、すでに書いたが、22週の予告が「舞と御園の会社設立」を示唆していた。御園記者、毎報新聞を辞めてしまうのかー。もったいないなー、と思ったのは、このところ記者の退職が多いと聞く古巣の新聞社のことを思ってのことだ。あ、もしかしたら、「副業」かな、それならいいな、などと思いつつ、新しい会社の行方と彼女の言葉遣いを見守る所存だ。

(文/矢部万紀子)