ところで、貴司の短歌のファンで有名なのが俵万智さんだ。ツイッターで貴司になりかわって短歌を詠んだり、舞と貴司の結婚を祝う歌を詠んだり。『あさイチ』で博多華丸・大吉の2人が俵さんのツイートを紹介していたし、本人も「非公式応援歌人と呼ばれてる 妄想短歌とまらぬ我は」(2月23日の投稿)と宣言している。3月3日には舞と御園記者が起こした会社「こんねくと」について、「会社名、貴司くんがアイデア出すのかと思ったけど、見守ってる感じにグッときた」とつぶやいていた。

 というわけで、『舞いあがれ!』もあと1か月。「こんねくと」が無事に離陸し、飛べるのかが焦点になるのだろう。ちょっと心配なのが、起業という方向がデラシネとはだいぶ違うことだ。町工場の活性化を目指すという方向はさておき、儲(もう)からなくては話にならない。《散りしものらへ 陽の差す時刻》でいうならば、舞が「陽」になり、町工場が散らないようにする、ということになるのだろうか。

 ここでは多く触れないが、『舞いあがれ!』は桑原さんの他に2人の脚本家がいて、週によってはその人たちが書いている。いろいろな事情でそうなっているのだろうが、問題は他の人だとデラシネ度がぐっと下がることだ。ここはひとつ、桑原さんで通してほしい。そうでないと、いま流行(はや)りの「スタートアップ物語」になってしまう気がする。これからもデラシネと陽菜と大樹をお忘れなく。絶賛お願い中だ。

(文/矢部万紀子)