高円寺はお金のにおいがしない街

──高円寺のどういう部分に、著名人は惹(ひ)きつけられていると思いますか。

みうらさんが“高円寺ならいいよ”って言ってくれたのは、たぶん、お金のにおいがしないからなんですよね。高円寺を使って売名行為をしようとしてもできないでしょ? っていう。そういう部分じゃないですかね。街が人を育てているなっていう気はしますよね。でも芸人もミュージシャンも売れるとみんな高円寺からいなくなるから、よく『踏み台の街』って言われているみたい(笑)」

──これまでで、問い合わせが多かったのはどの号でしたか?

「タブレット純さんが表紙の号(88号・2022年12月15日発行)かな。地方の方には、切手を送っていただいて郵送しているのですが、歴代でいちばん問い合わせが多かったかもしれないですね。手間をかけても欲しいって人は熱狂的なファン。特にほかのメディアにあまり出ていない人の場合は、貴重なのかもしれないです」

タブレット純さんが表紙の88号

──改めて23年という歴史をどう感じますか。

「23年という歴史があるので、誌面作りもだいぶやりやすくなっていますよね。長年継続してきたことで、著名人の方もノーギャラで出ていただけているのだなと思います。改めて見ると、1、2号の古着屋マップに載っているお店に全部自分で行ったと思うと、ぞっとしますね(笑)。今だと絶対にできないですよ」

──ほかの人がやっていなかったことを始めるのは、パワーがいると思います。

「今は印刷やデザインが簡単にできるようになってきたけれど、周りの人がまだやっていないころに『SHOW-OFF』を始められたっていうのはよかったんじゃないでしょうか。フリーペーパーって、'00年代にちょっとブームになったんです。それで、どこも真似をしてフリーペーパーをバンバン出していたけれど、ほとんど廃刊になっている。その中で、ずっと続けていられるっていうのは本当にラッキーでした

──話をお聞きしていると、ノーギャラでも協力したいと思わせる魅力があるんですよね。

私は『SHOW-OFF』自体で儲けようとはまったく思っていないんです。誌面にそういったビジネス色が出ていないっていうのはあるかもしれないですね。ただ、『SHOW-OFF』をやるために、ほかの事業できちっと収益を得ようって思っています。これまでどおり、印刷代を出し続けていけるなら続けていきたいなっていうのはありますね」

──今はウェブ媒体も増えてきています。その中で、印刷にこだわる理由はなんですか。

「やっぱり紙物が好きなんですよね。ウェブとかデジタル系が増えてきたけれど紙も作りたがる会社なんで(笑)。例えばインターネットを見ていても、大事な部分は出力して紙で読みたいなって感じる。『SHOW-OFF』もウェブマガジンにしてもいいのかもしれないけれど、ネットじゃない代わりに発行部数の人口にしか読まれない。それがまたいいのかなっていう気もしています。やっぱり紙のほうがプレミアム感もありますね

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『SHOW-OFF』の表紙を眺めているだけで行ってみたいと思ってしまう、東京の中でも不思議な親しみやすさがある街・高円寺。後編では、佐久間さんが手がける『高円寺フェス』のことや、高円寺という街の移り変わりについてお聞きします。

(取材・文/池守りぜね)