柚香・水美の花組生え抜きコンビは見納め。軍服の次はスーツで色気発揮
美しくも悲しい芝居の感傷を吹き飛ばすショーは『ENCHANTEMENT(アンシャントマン)-華麗なる香水(パルファン)-』。タイトルはフランス語で香水の意味。香水をテーマに、花組らしさにあふれたショーだ。
ひと口に宝塚といっても5つの組にそれぞれ組の雰囲気があり、いちばん古い花組はいわば“超正統派”。男役の美学をキザに追求し、ダンスが得意なスターを輩出したことから洗練されたダンスにもこだわりを持っている。ゆえにザ・宝塚──黒燕尾やスーツでキザる男役を堪能したいならうってつけだ。ましてトップスターの柚香さん、2番手の水美さんがともに生粋の花組育ちで、それが舞台にプラスアルファの熱気を生み出している。
そして、演出の野口幸作さんは筆者が今もっとも推している演出家。宝塚らしい大人数での豪華なショーを楽しみたければまずこの人のショーを見ろ! と力説する。なのでお芝居の美しさだけで燃え尽きてしまわないように。
先ほど柚香さんの軍服姿の美しさを熱弁してしまったばかりだが、この人はスーツも朝飯前に着こなしてしまう。またこの公演を最後に水美さんが専科に異動するので、柚香さんと水美さんの「れいまい」コンビはいったん見納めになる。とりわけ中詰めの後の第7章「Musk」の場面は、花組ファンなら2人の息の合ったダンスを目に焼きつけたくなるだろう。
芝居なら軍服、ショーはスーツに燕尾服と、男役の美麗さをたっぷり堪能できる3時間。布教にもぴったりの2本立てで、生観劇はもちろん、映像でも俗世を忘れて夢見心地になれる。
(取材・文/大宮高史)