──映画とは別にミュージック・ビデオの映像の中には、ヒッチコックなど名画をモチーフにされたシーンなどもありますが、どのようなイメージで撮られたのですか?

そうなんです、ヒッチコック。お若いのによくおわかりで(笑)! 『好き好き大好き』のミュージック・ビデオの中で、ヒッチコックの『サイコ』をオマージュしたシーンを入れているんですよ。『いかしたベイビー』は、プロデューサーから“バッドエンドにはしないでください”って念を押されたんです。私が悪い終わり方にしそうと思われたのかな(笑)。“明日も頑張っていこうっていう前向きな感じの映画を撮ってください”って言われて」

──戸川さんの楽曲もそうですが、ただ悲しいだけではないストーリーですよね。

「そう。観ていただいた方にはわかると思うけれど、この映画のヒロインはずっと自由がなくて。田口さんに演じてもらった役と出会ったことにより、久もっちゃん(久本雅美さん)に演じてもらった役とも出会って主人公はおしゃれになっていくし。ちょっと悲しい部分があるからこそ、そこから人って前向きになれるんじゃないかなって。そういうほうが印象に残るんじゃないかなと思ったんです。だからバッドエンドではないんですよ

普段の衣装は借りものではなく自前。NHKではタブーな服を

──戸川さんの名前で検索すると、関連ワードに「ファッション」という言葉が上がります。『ヒットスタジオR&N』の司会では、毎週バラエティに富んだファッションが楽しみでした。

「あれはね、スタイリストさんがいたの。でもパンクっぽい格好は自前。衣装もね、自分でレンタルすればよかったんだけれど、スタイリストさんみたいな大きなバッグを下げて返しにいくのも面倒で。向いてないんですね。だから買っちゃえ!ってなっていた。そうしなければ、“(視聴者は)また同じ服着ている”ってなるから、すごい服だらけになっちゃって(笑)」

──『HYSTERIC GLAMOUR(ヒステリックグラマー)』が出していたジョンソン&ジョンソンの『ベビーパウダー』をパロディにしたカットソーは、マネして買いました。

ジャンキーバッドパウダーね(笑)。NHKで着ちゃったんだよね。NHKはメーカー名が入った服を着るのはNGだったけれど、“これならどう?”みたいな。『冗談画報』(1985〜88年にフジテレビ系で放送された深夜番組)では何パターンも衣装替えをしたり、そういうふうにファッションも楽しんでいましたね