Z世代の楽しみ方、最高じゃないですか

 現在41歳の柏井氏。インタビュー前編で「いいものを知ってもらうための“玄関”でありたい」と語ってくれた気持ちは、自身とは年の離れた若者たち、いわばZ世代に対しても変わることはない。タイムパフォーマンス=タイパを重視し、カルチャーに積極的に親しまないZ世代の若者が増えてきたと言われる昨今、柏井氏はどのような戦略で若者たちの心をつかんでいくのだろうか。

やっぱりコロナ禍を境に、地域も、世代も、いろんなものが断絶したなと実感しています。特に日本の場合は、海外とのカルチャー的な断絶って結構あって、向こうでトレンドになってることや楽しみ方が、日本では知られていないということも多いです。ただ、必ずしもそれが悪いことだとも思っていなくて、そのぶん日本独自のヒップホップとか、日本独自の音楽カルチャーや遊び方が生まれてきてもいる。先ほどのシティポップと同じように、その時代その時代の若者たちが、自分たちのスタイルを探して遊んでる。それは何も否定しようがないし、むしろ最高だなって思っています。

コロナ禍の「断絶」をポジティブにとらえる柏井万作氏。未知の刺激が生まれる楽しさや幸せを大切にしながら「Z世代と我々世代とで、どんどんクロスオーバーしていけたら」と話す 撮影/福アニー

 今だと例えば、自分が体験してきたようなクラブカルチャー、ダンスミュージックの文脈って日本ではあまりお客さんが集まらないんですけど、それとは別のクラブカルチャーが若い人たちの中で生まれていて。DJバーと呼ばれるような小箱が元気で、数十人くらいのパーティーで熱狂している若者が増えているとか(編注:下北沢SPREADの姉妹店ILLASなど)。自分は全然コミットできていないですけど、そこにも日本独自のカルチャーが生まれているのだと思うし、そういう話を聞くとワクワクします。

 自分は編集者として、いろいろなカルチャーがミックスして、未知の刺激が生まれる楽しさや幸せを大切にしたいので、そういう若者独自の新しいオルタナティブな遊び方と、我々世代とで、どんどんクロスオーバーしていけたらいいなと思っています。若い子たちからしたら、勘弁してよって思うかもしれないですけど(笑)」