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芸能

柳亭こみち、落語界での過酷な修業時代を明かす「毎日6時に出発し1時に帰宅、3箇所に潰瘍が」

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柳亭こみちさん。はつらつとした笑顔が観客を元気にしてくれる 撮影/伊藤和幸 撮影協力/新宿末廣亭
目次
  • 柳亭こみちさんが女性版の古典落語を精力的に作り出すワケは
  • 根っからの“お祭り女”、バリバリの営業職からまさかの落語家へ
  • 朝から夜中まで修業の日々。身体のあちこちに潰瘍ができた
  • 厳しいからこそ「修業時代だけでやめてたまるか」と踏ん張れた

 2023年3月上旬(1日~10日)、浅草演芸ホール夜の部にて、「桃組」と題されて全出演者が女性の公演がおこなわれた。毎日公演が開催されている都内の寄席定席は4軒あるが、女性だけでの10日間の興行は初めて。落語のみならず、漫才、講談、太神楽、奇術、三味線漫談などもすべて女性で、人気女性落語家の蝶花楼桃花さんの呼びかけで実現した。10日間の興行は日を追うごとに話題を呼び、ほぼ満席が続いた。女性の芸人さんたちも、通常の寄席よりどこか自由で弾けているのが印象的だった。

 いつの間にか、ひとつの興行が女性だけで成り立つほど女性芸人が増えていたのだ。古くからの寄席ファンにとっては目から鱗(うろこ)が落ちたような気持ちだったはず。

柳亭こみちさんが女性版の古典落語を精力的に作り出すワケは

 伝統芸能である落語の世界も、もう「女性だから」「男性だから」という時代ではない。そんな中、ここ数年、気になってしかたがない女性落語家がいた。

 柳亭こみちさん、48歳。

 彼女も「桃組」に出演していた。いつもニコニコと機嫌よく出てきてふわりと座り、お辞儀をして顔を上げると、「なんだかおかしい」。小柄で童顔なのだが、もちろんそれがおかしいわけではなく、こみちさんの全身から放たれる雰囲気が、いかにもこれから楽しい時間に誘ってくれそうで、思わず前のめりになってしまうのだ

 こみちさんの持ち味は、従来の古典落語に加えて、登場人物を女性に変えたり、出てくる女性の視点で練り直したりと工夫を施した古典落語だ。試行錯誤を重ねながら、今のスタイルに行き着いた。

「例えば寄席で、“爆笑派”と呼ばれる男性師匠のあとに私が出て、コテコテの古典落語をやってもインパクトは少ないんですよ。とにかくお客様に笑顔になっていただきたいのに、笑いの量では男性に負けちゃう。まっすぐに古典落語をやって、“うまい”と言われるようになりたいと思ってきたけれど、それが必ずしもお客様に喜んでもらえるわけではない。じゃあ、お客様が笑ってくれるのはどういうときなのか。二ツ目に昇進してから、ずっとそれを考えていました

 有名な「時そば」という噺(はなし)がある。そばの屋台で繰り広げられる滑稽噺だ。冬の深夜にそば屋を呼び止めた男が、屋台の提灯から割り箸、器にいたるまで褒めまくって、そのあげく代金をちょろまかす。それをこっそり見ていた別の男がその手口に感心し、翌日、自分もやってみようとして失敗するのだが、こみちさんはこの噺に登場する最初の男を女性に変えた。屋台の店主も口を挟めないようなマシンガントークでしゃべり倒したあげく、華麗に代金をちょろまかして去って行くのが、なんともいえずおもしろい。

 主役を女性に変えることで、女性の噺家が演じる際に無理をしなくてすむ。店主の男性に対し、「気の毒に」という客の心理も生まれやすい。だから翌日、それを見ていた若い男が同じようにちょろまかそうとして失敗、店主に軍配が上がると、溜飲(りゅういん)が下がるような気にもなる。登場人物を女性に変えることで、逆に周りの男性たちも生きてくるのだ。

 こみちさんはひとりでもがき続け、いろいろな人の意見を参考にしながら、死に物狂いで女性目線の古典落語を作り出してきた。その数、今は30を越える。この世界に入って20年、真打ちになって6年。試行錯誤を重ねてきてようやく自分の道、自分の形が見えてきたところだと彼女は言う。

落語について語るときの表情は真剣そのもの 撮影/伊藤和幸
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