お金稼ぎ以上の「人生の豊かさ」を感じられるホスト

──それほど遊びを楽しめるからこそ、Smappa! Groupはこれまでのホストがしてこなかった活動ができているのかな、と思います。

「そうですね。例えば歌会なんて歌舞伎町のホストが絶対に自分では選ばないことですからね。普通のホストって毎日のように同じ仲間たちと同じバーに通うんですよ。そんな状況だったから、あえてエラーを起こしたかったんですよね。

 好きなことは自分で勝手に選ぶじゃないですか。それが自然な形とは思っていません。結局のところ興味あることを選ぶほうが楽なんですよ

 今はYouTubeを見ようと思ったら、自分の興味がある動画ばっかり出てきますよね。だから楽して同じような動画を見ちゃいますけど、それってGoogle側からターゲティングされているだけで、決して自然な形じゃないと思います。むしろかなり人工的にコンテンツを与えられているわけで、遊びとはいえないです。だからあえて、歌会を開催したんですよね」

──その結果、ホストの方がちゃんと参加しているのが素晴らしいです。

「みんな嫌々ですよ。強制しているだけです。やっぱり興味のないことにチャレンジするのは楽じゃないですからね。

 でもそれでいいと思います。嫌々でもエラーを起こさないと人生は変わらないじゃないですか。何もしないより、1回や2回だけでも参加して想像もできない経験をしたほうが、彼らの人生を豊かにすると思ってます」

Smappa!Groupではボランティア団体「夜鳥の界」の運営もしており、スタッフのみなさんが歌舞伎町の清掃活動をおこなっている

──そう考えると、Smappa!Groupのホストのみなさんは、すごく大事な経験をしていますよね。他のホストの運営会社では絶対できない経験ができます。

「そうですね。一般のホストの経営者は資本主義のゲームメーカーとして優秀な人は多いと思います。でも従業員の人生を豊かにする能力に関しては足りてないですよね。いくら稼いでも“足りない足りない”って競争をあおるじゃないですか。

 もちろんビジネスとしてお金は大事ですが、僕は従業員に対して“もっといろんな遊びを通して想像力を高めてほしい”と思います

──でも接客業の場合、想像力がお客さんの楽しみにもつながりますよね。私も何度かSmappa!Groupのコンセプトカフェ(※)にお邪魔しましたが、「お客さんの求めていることを見抜いて柔軟に接する力」の高さには驚きます。すさまじく接客のレベルが高いと思いました。

※歌舞伎町のBAR「麦ノ音」内のスペースで運営している「ひみつきち屋さん」。動画配信などで活躍中の、星乃すあまさんが一人で運営されている。

「前編でもお話ししましたが、やっぱ歌舞伎町は他の町と比べるといろんなお客さんがやってきます。客層が偏っている町と比べると、臨機応変に対応できる人が多いとは思いますね。

 コンカフェにはよく行かれるんですか?」

──そうですね。たまに行きます。

コンカフェのおもしろさって不自由さだと思うんですよ。コンカフェって明確なルールがあるじゃないですか。だから不自由なんですよ。例えば仮面舞踏会って相手の顔がわからないから、普段は選ばない相手を選ぶ。そこが面白いじゃないですか。

 歌舞伎町でいうと、前編で“お金が基準になっているから、何者でもない状態になれる”と言ったんですけど、それはやっぱり不自由なんですよ

 自分の趣味や人間性を理解してくれる人との会話のほうが楽ですよね。でも知ってる分、予想できるような会話しか生まれないから楽しくないじゃないですか。だから遊ぶうえで"不自由さ"があったほうがいいと思いますね