──2023年4月に歌舞伎町タワーがオープンしました。町はどう変わっていくと考えていらっしゃいますか?
「どうなるんでしょうね。わからないですが、Smappa!Groupとしては観光に力を入れていきたいですね。香港の重慶大厦(チョンキンマンション※)のように、歌舞伎町の多様性は世界的に見ても超ユニークなんですよね。だからダイバーシティに興味がある世界中の人たちがやってくる可能性もあるのかな、と思います。
日本で“ダイバーシティな会社を作りたい”と思っている経営者や政治家の方もそうですよ。歌舞伎町ほどいろんな人が一緒に暮らしているコミュニティは他にないんだから、歌舞伎町で遊べばいいじゃんって思いますね」
※1960年代に開発された香港の複合ビル。多種多様な人が共存していて、コミュニティ内で経済圏が生まれている。
──経営としても面白いフェーズですよね。
「そうですね。とはいえ、僕はやっぱ酒を飲んで酩酊状態で遊ぶことが人生で大切なことだと思っているので、歌舞伎町で毎日酒を飲んでいようかなと思いますよ。最近ちょっと酒のダメージが残ってきちゃうので、体力的にあと5年くらいですかね(笑)。限界が来るまでは遊び続けたいですね」
「自分もいていいんだなと思える」 日本一心の広い町・歌舞伎町の魅力
筆者は数年前、歌舞伎町で働いている50人ほどの方にインタビューをし続けていた時期がある。一人ひとりが多種多様なバックグラウンドを持っていた。歌舞伎町を選んだ動機もさまざまだったが、特に「安心できる」や「自分もいていいんだなと思える」という言葉をよく聞いたことを覚えている。
そのときに歌舞伎町の心の広さを知った。そして今回のインタビューで歌舞伎町の姿勢を教えてもらい、はっきりと腑(ふ)に落ちた。歌舞伎町ほど人に対して寛容な町は他にない。
ただ、読者の方の中には「なんか怖そうな町」という目で見てしまう方もいると思う。しかし歌舞伎町はそんな偏見を持った方もオープンに迎え入れてくれる。イメージだけで差別的に見てしまうのは私たちだけなのだ。
そんな町の特徴と手塚さんの「遊び観」が通じているのは、とても面白い。遊びとは想像もしない自分と出会うこと。怖いとか嫌悪とか興味というフィルターをなくして、すべてを受け入れる姿勢は、まさに歌舞伎町のカラーと共通している。そこには禅的ともいえる素敵さがある。
さて、手塚さんの言葉を借りれば、遊びは想像しない"余白"が大きいほど面白い。昨日まで知らなかった自分に出会い、自分の姿を見つめ直せる。つまり、普段は歌舞伎町に来ない方ほど、歌舞伎町での遊びを楽しめるのだろう。
「自分には合わないかも……」と腰が引けつつ、この記事を最後まで読んでしまうほど気になっちゃう方こそ、一度遊んでみてはいかがだろうか。きっと次の日の朝には、偏見や差別的感情が少しだけ薄れた優しい人間になっているはずだ。
(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)