NHKの“幸吉売り出し大作戦”

 今回はもう、幸吉(笠松将)でしょう。3週初日の11話と12話に登場、12話終了後には笠松さんが『あさイチ』に出演した。朝ドラ前々作『ちむどんどん』でヒロインの父親役の大森南朋さんが出演したときは、直後に父親が死んでしまった。そのためネット上では「幸吉、もう退場?」と話題になったそうだ。

第35回東京国際映画祭レッドカーペットに登場した笠松将(2022年10月) 撮影/北村史成

 ここで私の見解を表明させていただくなら、幸吉はまだ退場しない。大森さんの『あさイチ』は「プレミアムトーク」だったが、笠松さんの『あさイチ』は料理&ダンス。つまりこれ、笠松さんの素顔を見せて人気を一気に高めようというNHKの作戦なのだ。期待どおり笠松さんはカメラ位置を見誤り、司会の博多大吉さんにそれとなく教えてもらっていたし、上手な料理と苦手なダンスがキュートだった。

 というわけで当面、幸吉は安泰なはずなのだが、ちょっとだけ暗雲が。21日に第4週の予告動画が公開されたのだが、そこに幸吉の姿がなかったのだ。だがしかしbut、やはりしばらくは大丈夫と思う。幸吉が綾(佐久間由衣)とかかわる役だからだ。

 綾は家業の酒造りに並々ならぬ興味を持っている。それゆえ見合いも破談になるほどで、「女は酒造りにかかわってはいけない」「自分が片づいたほうが皆のためになる」。どちらもわかったうえで、酒造りへの情熱が抑えきれない。男性が主人公の『らんまん』で、今に通じる女性の生きづらさを体現しているのが綾だ。

映画『君は永遠にそいつらより若い』初日舞台挨拶での佐久間由衣 撮影/渡邉智裕

 一方、幸吉は峰屋で働く蔵人だ。酒蔵の前で綾に自己紹介する。幼いころにここで修業し、今は「麹屋」という役割を担っている、と。「麹」について興味を示した綾に「お教えしましょうか」と申し出る。「幸吉さん、ありがとうございます」という綾には、「もったいないき。幸吉とお呼びください」と答える。立場の違いを承知のうえで、酒造りという仕事においては対等に振る舞おうという幸吉は、つまり綾の理解者朝ドラ『カーネーション』(2011年度後期)に登場した綾野剛さんを思い出した。