自己完結しないオープンマインドが、外との関わりを生む

──本作を拝読して、ふかわさんのコミュニケーションスタイルが気になりました。初対面の相手(特にスナックをご一緒したおじさん)と一定の距離を保ちながらもいつの間にか懐へ入って仲良くなるのが、ふかわさんの不思議な魅力だな、と。普段どんなことを大切にしながら、他者と接していらっしゃるのですか?

 (しばらく考えて)どうだろう、入れてもらえない懐のほうが多い気がしますけどね。むしろコミュニケーション下手だと思います。

 ただ海外を含めて、一人で旅することは多いんですよね。特に海外ではタレントとして知られていないこともあって、一人の旅人として向き合ってくださるわけで。そういうところではオープンマインドになっているのかもしれません。今回もスマホを持たないことで、そういう気持ちに押し上げてくれたのかな。

 トラブルがあってもスマホで調べて検索すれば、自己完結じゃないですか。でもスマホがないことによって外とのかかわりに意識が向きます。台風で岐阜に入るまでの鉄路が名古屋駅で絶たれたときも、駅のアナウンスに耳を傾け駅係員に尋ねることで、バスで向かえることを知り。「自己完結しない」って姿勢が、外とのつながりになっていくんじゃないでしょうか。

ふかわりょうさん 撮影/junko

──それは旅先だけでなく、普段の日常生活でも心がけていることですか? タモリさん、内村光良さん、有吉弘行さん、マツコ・デラックスさんといった芸能界のお歴々から、ふかわさんが愛されているのを感じるので。

 いやいや、普段はまったくそんなこと意識していないですね。仕事上で出会った方は、たまたま相性がよかっただけ。何か特別なことをしているように見えているのかもしれないけど、僕を受けつけない方もたくさんいらっしゃるので。

──そうですかね? でも過去の著作を拝読すると「世の中とご自身の隔たり」をいたるところに感じていらっしゃる様子がうかがえます。そんなふかわさんならではの着眼点を生かしながら、今後どのような活動や仕事をしたいと感じていらっしゃいますか?

 視点というほどでもないんですが、やっぱり日常なんですよね。暮らしのささやかなところに人が感じ取れる豊かさは潜んでいると思うので、基本的にはそういったことを引き続き見つめていたいです。アイスランドの旅行記にしても、激しいアクシデントやドラマがあったわけじゃない。出会った人との会話や育んだ関係性に、一瞬の輝きを感じるので。

 たぶん、そういう人間なんですよ。そういったことにアンテナが反応するので、引っかかったものを宝箱に詰めてしまう(笑)。

 根底には「生きているって素晴らしいはずなのに、どうしてそれを実感する局面が少ないんだろう?」「何十億年という歴史の中で、いま同時に生きている人たちがどうして争うんだろう?」という思いがあるんです。

 もしかするとスマホを手放すことで人生の優先順位や景色が変わるんじゃないか。そうすれば日常、もっと言えば生きていることは素晴らしいと感じられるんじゃないか──。それを確かめたくて、活動している気がします。

(取材・文/岡山朋代、編集/福アニー、撮影/junko)

【Information】
●書籍『スマホを置いて旅したら』(ふかわりょう著、大和書房刊)
スマホを持たずに旅したら、どんな景色が見えるだろう? 明日の彩りが変わる、ローファイ紀行。

書籍ページ:https://www.daiwashobo.co.jp/book/b621512.html