「現実は想像のようにはうまくいかないけど…」

 長野県出身で、「物語と画が、物心つくころから好きで、自分で何か書いているときも“これが本当になったら……”と、自分の頭の中で映像化し、よく想像していました」という監督。画家に漫画家・作家など、物語を作る仕事に憧れていく中で、映画監督を目指すようになった。

 「自分の楽しみなこと(誕生日や修学旅行など)があると、よく先行してその日にあってほしい出来事を想像して絵を描いていました。でも、現実は、想像のようにうまくはいかないですね。その後、現実に起こった出来事よりも、自分で想像した出来事のほうがキラキラとしていて、面白かったりします。想像したものを、リアルに観たいという欲望がずっとあるのかもしれません

 物語が好きで、想像力豊かなところは子ども時代から変わっていない。現実と想像のギャップを埋めたい欲求が、監督の美しい映像演出の創造力につながっているのかもしれない。

 「想像して画や文を描く、撮影をしてそれを見返すと言うのは、今思うと、(専門的ではないですが)いつも日常にあったなぁと思います。どれも大好きなことだったので、いま自分が監督としてキャストさんやスタッフさんと映画・ドラマ・MVを作れていることを、本当に幸せに思い、出会うみなさんに本当に感謝しています」

酒井麻衣さん 撮影/松島豊

(取材・文/大宮高史)


《PROFILE》
酒井麻衣(さかい・まい) 映画祭でグランプリを受賞し 2017 年『はらはらなのか。』で商業デビュー。「映像作家100人 2020」に選出される。以後も数多くの映画・ドラマ・MVを手がける。代表作にドラマ『恋のツキ』『ぴぷる-AIと結婚生活はじめました-』『荒ぶる季節の乙女どもよ。』『明日、私は誰かのカノジョ』、MVでなにわ男子『初心LOVE』『ダイヤモンドスマイル』、優里『レオ』、Nissy『I Need You』など。公開待機作に映画『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』(2023年9月1日公開)がある。

『劇場版 美しい彼~eternal~』
(C)2023 劇場版「美しい彼〜eternal〜」 製作委員会

【キャスト】萩原利久  八木勇征  高野洸  落合モトキ  仁村紗和  前田拳太郎  和田聰宏 ほか
【原作】凪良ゆう『美しい彼』シリーズ(徳間書店 キャラ文庫刊)
【監督】酒井麻衣
【脚本】坪田文
全国公開中