現代に通じる問いを含む、綾の感動的な長台詞

 綾の長台詞は違った。「万太郎の苦しみ」を「男性だから苦しい」ととらえ、それは「性別ゆえに苦しい」のだから「女性ゆえに苦しむ女性と同じ」と変換する。その手間というか無理というか、そういうものがなく、まっすぐ刺さってきた。24話、使用人や蔵人を前に万太郎が「自分は東京に行く、峰屋は姉に任せる」と発表する。一貫して感じの悪い分家の男連中が案の定、大反対を口にする。「若い女」もダメなうえに、「穢(けが)れている」女は酒造りでは厳禁だ、と。そこから綾が、大変なことはわかっているが、今、とても嬉しいのだと語り始める。

 小さいころから酒造りが好きだった。男に生まれなかった自分を何度も恨んだ。女は穢れているから、蔵に入るな。自分ではどうにもならないことで、なぜだろうと苦しかった。そしてこう続けた。「この世に男と女がおって、どういて女ばかりが、そう言われんといかんじゃろう」。さらに「この先、未来永劫、女は穢れちゅう、立ち入ったらいかんと言われ続けるがか」と問いかけた。

映画『君は永遠にそいつらより若い』初日舞台挨拶に出席した佐久間由衣 撮影/渡邉智裕

 やや頭で考えたような台詞ではあった。が、今に続く問いであることも確かだ。そんなことを思っていると、「私は綾さまについていきますき」と最後列から1人の女中が叫んだ。「綾さまの酒好きは、ようわかっちょりますき」と隣の女中も続いた。シスターフッドだった。泣けた。