若葉の言葉に救われる。ハッと、考え方を変えてくれる岡田脚本

 そうして翔子と若葉と再会したサチ。ここで若葉の言葉に胸を打たれた。宝くじに当せんして怖かったと、ふたりに打ち明けたサチが「どんだけ後ろ向きなんだって話だよね」と言ったとき、正直どこかで「確かに」と思ってしまった。大変申し訳ない。

 私自身を含め、このドラマに強く惹(ひ)かれる人は、サチが言うように「どこかさえない部分」のある彼女たちと、何かしら似たものを抱えているのではないだろうか。だから、若葉がサチにかけた次の言葉は、サチだけでなく、“似たものを抱える私たち”にも響くものだった。

「おだいり様(サチのバスツアーで付けられたラジオネーム)は後ろ向きなわけじゃないです。現実から逃げてないですから。背を向けてないので、ちゃんと前向きです。(中略)前向きだから、進まないという選択肢もあると思うのです」。

 ありがとう若葉ちゃん、ありがとう(脚本の)岡田さん。若葉の言葉は、サチに対してだけでなく、さえない私がおそらく私自身に向けていた“後ろ向き”への思い込みも、「それは前向きなんだ」と変えてくれた。

 若葉からの言葉のプレゼントはさらに続く。「ないんだよね、キャラとかそういうの」と言うサチに、若葉は「いませんよ、キャラクターのない人なんて」と返す。 “後ろ向き”な性格に悩む人以上に、自分には“キャラがない”と信じ込んでいる人は、きっと多い。

 生見演じる若葉からは、偽善ではなく、まっすぐに思ったことを返してくれているのが、よく伝わってくる。だから胸の奥まですっと届く。

 さて、そんないちばんの年下ながら、デキた若葉が「いろいろ辛酸をなめてきた」ことをうかがわせるシーンも描かれた。

 バスツアーの帰り、3人で作ったLINEグループのやりとりを見ながら嬉しくなって笑みを浮かべる若葉に、地元の住民が心ない言葉を浴びせる。「絶対男だよ、アレ」「あの女の娘だしね」。

 あまりにもヒドい、あることないこと、ではない。ないことないこと、ないことないこと……。若葉はこうしてずっと傷つけられてきたのだ。直前に、若葉の言葉によって救われていることもあり、余計に、こうして言葉で傷つけられている若葉を助けてあげたくて、つらくて仕方がなかった。

 しかし救うどころか、3話のラスト、“あの女(母である矢田亜希子)”が姿を見せ、若葉は1000万円が記された通帳を差し出してしまう。ここで若葉に「なぜ?」とは言えない。悪魔のような母親に支配されてきた若葉の身体が、そう反応してしまうのは仕方がないことなのだ。