「この話をするとハイボールが飲みたくなるんです」

──墨をする時間だったグラビア時代と比べて女優業はどうでしょう?

 まだまだ未完成です。

 女優業は苦戦していますが、一歩一歩とにかく地道にやっていこうと思っています。まさに日進月歩ですね。女優業に転身して今は3年目ですが、悔しいこともたくさんあります。あぁ、この話をするとハイボールが飲みたくなるんですよ(笑)。

──買ってきましょうか?(笑)

 お願いしま、、、いや、大丈夫です!

 25歳くらいのとき、グラビアアイドルを辞めて、とことん自分を見つめ直したことがあったんです。「変わりたい!」と強く思ったんですね。もっと自分の感覚を研ぎ澄ますべきだと思いました。

「脚下照顧(きゃっかしょうこ)」という言葉がありますが、まさにそれで、他人に対して理屈を並べる前にまず自分の足元を見直そうと。

忍野さら 撮影/吉岡竜紀

──具体的にはどういったことから変えていったのでしょう?

 そのときは流動的に入ってくる情報は、ほとんど遮断していました。テレビを捨てて、SNSも基本見ない。細かいことで言えば、家の中にある文字が書いてあるラベルなんかも全部はがしてみて、自分の時間は基本的に「空白の世界」。超暗いですよね(笑)。

──そこはノーコメントで(笑)

 なりたくない自分でいるぐらいなら、たとえ世間からはぐれても構わないと思いました。自分とは一生の付き合いですからね。

 昔は自分にできること、できないことが自覚できていなくて、なんでもかんでも「やります! できます!」と言っては、鳴らせない音を無理やり鳴らそうとするようなところがあったんですよね。今は、自分に鳴らせる音を鳴らせればいい。限られた音を、よりきれいに鳴らせる努力をしていきたいと思うようになりました。

 そんな時間を経てようやく、人として自分のチューニングが合ってきた。音が合うような瞬間を感じられるようになってきたかなと思ってます。