初個展「うららか」について

──今年3月には書道家として初めての個展「うららか」を開かれましたね。

 個展はお祭りのような感覚で、テーマは“大人の始業式”でした。

 年齢を重ねていくと、年度の始まりって感じにくくないですか? 私はむしろ、春は気候が暖かくなるせいか、ぼーっと過ごしてしまいがちです。大人になってもちゃんと節目があったらいいなと思い、春の訪れを表す「うららか」というタイトルにしました。

 会場の手配やレイアウトなど、すべて自分で考えられるのは、やりがいを感じて楽しかったですし、足を運んでくださったお客さんの笑顔が見られるたび、うれしくて胸がいっぱいになりました。

「うららか」(作/雨楽)

──私も拝見させていただきました。作品にしたためる言葉は、ご自身にとってどんな意味がありますか?

 私の場合「言葉」に敬意を持ちながらやっています。

 私自身が「言葉」に救われることがよくあります。言葉の意味ってちゃんと調べると面白くて、思考を転換する潤滑油になってくれるんですよ。

 例えば「諦める」という言葉がありますよね。諦めるって、挫折だったり、途中でやめるような、ネガティブな意味で使いがちですが、本来は「物事を明らかにし、受け入れる」という意味が込められてます。不必要な苦しみは手放そうということです。

──本当は優しい意味も含まれているんですね。意外です。

 言葉って昔の人が作ったものなのに、時代背景が変化しても変わらず人の心に響くものばかりで驚かされます。

最近書いた美人画です。「女身」(作/雨楽)
美人画「ほろり涙ぼくろ」(作/雨楽)
美人画「昼下がりの情事」(作/雨楽)