母・まつと叔母・みえ、それぞれが考える「女の幸せ」

 それより9週の途中、あることを知り、とても驚いた。ストーリーではなく、『らんまん』のホームページで知ったのだ。「登場人物相関図」の「東京の人びと」の中に寿恵子がいて、こう紹介されていた。

《植物研究に金をつぎ込む夫のために、あの手この手で苦しい家計をやりくりし、最終的にはあっと驚く方法で家族を救う》

 え、そうなの? これまでもホームページは見ていたが、こういう記述に初めて気づいた。ここまでのところ寿恵子は明るいオタク女子でしかなく、結婚後の貧乏生活をどうするのかと心配していた。それが家族を救うとは。もしやオタク的手法で? とにかく、寿恵子はたくましい女性になるらしい。熱烈歓迎だ。

 何度も書いているが、お坊ちゃん男性が主人公の『らんまん』には、共感できる女性が必要だ。高知編には姉の綾(佐久間由衣)がいてくれた。東京には不在だったが、成長した寿恵子がそうなのか。すでに種はまかれている。そんな気もしてきた。

 母・まつと、その妹のみえ(宮澤エマ)だ。2人の会話はいつも、「女の幸せ」がテーマになるのだ。新橋で料理屋をしていて、政府の役人とも近いみえの持論は「これからは女の時代、女も才覚ひとつでのし上がれる」だ。だから、玉の輿(こし)に乗れと寿恵子にすすめ、ダンスを習う話を持ち込んだ。一方のまつは、元売れっ子芸者。武士のお妾(めかけ)さんになり、“夫”亡き後に手切れ金で和菓子屋を始めた。娘の「玉の輿」に反対なのは、庶民の娘は所詮「妾」だという冷静な分析、そして「男にすがって生きていくような娘にだけはしたくないんだよ」という思いがある。この種が、どう寿恵子で開花するのか。楽しみだ。

『らんまん』で寿恵子の叔母・笠崎みえを演じる宮澤エマ 撮影/北村史成