派遣社員として働く普通の20代女性が起業するまでの成長を演じた

――台本を読まれた際の、映画全体への印象はいかがでしたか?

 上質で上品な、大人な作品だと思いました。これまでマンガ原作の女子高生という役が多かったので、こうした作品に出合えたことが嬉しかったです。

 黒木さんとは、連続ドラマのデビュー作『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ系)からご一緒していて、これで3作目なんです。でも、しっかりとお芝居させていただくのは初めて。感慨深かったですし、嬉しかったです。

――今回、演じた恵麻は、男性社会の中でも、間違ったことは間違っているときちんと言える女性ですね。

 すごく勇気のある女性だと思いました。それによって自分の仕事を失うかもしれないのに、自分を犠牲にしてでも、間違ったことには意見する。たぶん私はできないんじゃないかな。

――そうですか? 桜井さんにも実は、体育会系な、スパッとしたところがある印象があります。意見することで、結局クビになった恵麻は、やがて自分で会社を立ち上げることになりますが、桜井さんは社長としてみんなを引っ張ることはできそうですか?

 うーん、憧れますけど、難しいですよね。すごい責任を背負ってやっているわけですから、そんな度胸が私にはあるかな。なんだかんだ、私はやっぱり守られている中で力を発揮しているほうが合っているかなと思います。

 ただ(性格的に)社長は無理だけれど、いい右腕にはなれるかもしれません。私、すごく運がいいと思っていて。私を横に置くと、新会社がどんどん成長していくかもしれませんよ(笑)!?

桜井日奈子さん 撮影/松島豊

デビュー当時のマネージャーの言葉を支えにプラス思考へ

――それはいい。考え方もステキです。普段からそうした姿勢で行動しているのでしょうか。

 そうですね。運だけはいいので、普段から自分に思い込ませて、よいことは言葉にするようにもしています。言霊は信じていますね。

 デビュー当時からついてくれていたマネージャーに「言葉にはすごい力があるから、いい方向に進みたいなら、なんでもプラス方向、プラスの言葉に変換しなさい」と言われてきたんです。

 ただ、そうは言っても、イヤなことがあってため息をついちゃうことだって、どうしてもありますよね。そんなときも、“3秒以内ならセーフ”というルールを作っています。3秒以内に、ついちゃった息を吸う。それでナシ。ノーカウントです。

――あはは! なるほど。いいルールを聞きました。

 私は、それでずっとやってきています。3秒以内ならセーフです。

――恵麻も、「魔女さん」こと弥生さんからいくつもアドバイスをもらいます。桜井さんは、どの言葉が特に印象に残っていますか?

「社会を憎んでも仕方ないのよ。変われるのは自分だけよ」というセリフが、本当にそのとおりだなと、グッと刺さりました。誰かのせいにしてしまうと成長がない。そうではなくて、自分はどうすればよかったのかと、視点を変えると前に進める。

 次に同じようなことにぶつかったときの対策ができる。そういった考え方は、私自身も大事にしながら仕事をしていることもあって、特にそのセリフは刺さりました。

桜井日奈子さん 撮影/松島豊