昼夜公演で異なるセットリストを演奏
──覚える負担を考えるとライブの曲数を減らしたほうがラクだと思うのですが、『Billboard Live TOKYO』のライブ(2023年5月)では、2公演で異なるセットリストを演奏されたそうですよね。
「安全地帯にいてできないのって恥ずかしいじゃない。自分にとってハードルをちょっと上げて、周りからも“これは無理だろう”ってことをやれば、間違えても許してもらえるよ」
──ちなみに、ご自身の中でおすすめのアルバムはありますか?
「ないな~」
──(笑)。曲でもいいのですが。
「あくまで勉強のために聴いているだけで、夢中になって聴いているのとは違うからね。でも“こんな曲だったのか”って自分の曲を改めて好きにならないと、次の作品につながっていかない。ちゃんと自分の作品を愛していないと、お客さんにも失礼だって思う」
──以前から、ご自身の作品は聴くタイプだったのですか?
「いや。自分の出た番組も観ないし、自分のライブ音源も聴かないです。だって自分のライブの評判をいちいちチェックできないでしょ。ライブっていうものは、今日は成功しても明日も成功する可能性はない。演技もそうだけれどね。俺が演技やライブをやり続けているのは、うまくできたときの気持ちを残しておくことができないからなんです」
──では、泉谷さんより若い世代に向けて聴いてもらいたい曲はありますか?
「面倒くせぇな。自分で探せよ(笑)」
──まさに泉谷さんらしい回答ですね。
「自分の趣味を押しつけるヤツって俺は嫌だから。あと自分で出合ったほうが感動すると思うよ。昔のロックって、自由なようで“こうあらねばならない”っていう様式美があるでしょ。バカバカしい。俺はそういうのよりも、野獣化した“むき出しの美”みたいな音楽をやりたいなって思っている」

・『舞い降りる鷹のように』泉谷しげる

(取材・文/池守りぜね、編集/小新井知子)