テレサ・テンのカバー曲が海外でも大人気「この曲は鬼のように練習しました」

 さらに、Spotify第6位と第10位は、'10年代に発表した2作のミニアルバムからカバー曲がランクイン。第6位は『涙ひとつぶ』に収録の「時の流れに身をまかせ」、第10位は『Truth~飛べない鳥よ~』内の「グッド・バイ・マイ・ラブ」となった。「グッド・バイ・マイ・ラブ」はアジア圏を意識して選曲したそうだが、海外リスナー比率は約6割で国別では日本、ブラジル、台湾、香港での人気が高く、まさに狙いどおりの結果となっている。また、「時の流れに身をまかせ」はテレサ・テンのカバーということもあって、海外リスナーが約7割と非常に高く、日本とも親和性の高いブラジルや台湾で人気だ。

「この結果も本当にビックリです! 今後、テレサ・テンさんの楽曲をもっとカバーしようかな♪ なーんて(笑)。このミニアルバムは、新曲の『涙ひとつぶ』以外はカバーで構成しようと決めていて。収録曲は、一緒にお仕事させていただくことが多かったアジア圏の方がピンときて、かつ私のメッセージも届けられるような曲を、ボイストレーニングの先生と相談しながら決めました。やっぱりテレサ・テンさんは、歌えば歌うほど素晴らしいなと実感しますね! 声はきれいだし、日本語で歌われると、何とも言えない健気な雰囲気になるところが素敵で

「時の流れに身をまかせ」は、とても柔らかい声で、特にサビのファルセット部分がふわっと軽やかに聴こえることからも、近年の酒井法子の魅力が感じられる。

「そう言っていただけて、とてもうれしいです。この曲は難しかったので、鬼のように練習しましたよ!」

『涙ひとつぶ』には「時の流れに身をまかせ」のほか、「PRIDE」(オリジナル:今井美樹)や「生きてこそ」(オリジナル:Kiroro) も選曲されている。

「『PRIDE』は前向きな気持ちになれるので、私の好みで選びました。そして、『生きてこそ』も超絶に難しいんですが、当時、息子が(テーマソングとなっていたアニメの)『ムシキング』(甲虫王者ムシキング 森の民の伝説)が大好きだったので、ちょっと歌ってみようかなと思ったんです」

光が差し込む窓辺にて。横顔の美しさにウットリ 撮影/矢島泰輔

 本人としてはオリジナル曲の「涙ひとつぶ」と「Truth~飛べない鳥よ」(Spotifyではそれぞれ52位と31位)への思い入れも強いようなので、聴きどころを語ってもらおう。

「これもランクインしていてうれしいです。『涙ひとつぶ』のほうは、母の立場として歌っているので、歌うたびに息子が小さかったころの顔が浮かんできて、胸がいっぱいになります。そして『Truth~飛べない鳥よ』は、作曲の中崎英也さんに“今の私の曲を作ってください”とお任せしてできた楽曲で、“暗闇の中でも朝は必ず来るから”という、温かくも力強いメッセージを込めていただきました。どちらも大切な曲です」

「ノ・レ・な・い Teen-age」の歌唱は、プレッシャーを抱えながら全力投球!

 SpotifyのTOP10に戻ると、第7位は3rdシングルの「ノ・レ・な・い Teen-age」。1stシングル「男のコになりたい」、2ndシングル「渚のファンタシィ」がメジャー調の“ザ・アイドル”なミディアム・チューンだったのに対し、こちらはマイナー調のアップテンポで、当時の映像を見ても、酒井がシリアスな表情で力んで歌っているのが印象的だ。いったいどういった心境の変化があったのだろうか。

「ノ・レ・な・い Teen-age」のジャケットは何かを訴えるかのような強い視線が印象的だ

「そうそう! これは“一生懸命のかたまり”で歌っているんですよ! 心のハチマキを巻き散らかして(笑)、カッ、カッ! って歌っていますよね。昔の映像でもこの歌は、鼻の下に汗をかきまくっています。新人賞レースで勝ち抜けという事務所からのプレッシャーもあり、また『夜のヒットスタジオ』などの歌番組に出演した際は、サプライズで恩師の先生や同級生たちが来てくださるということもあり、歌が上手、下手というよりも、とにかく何かを伝えなきゃ! って頭がいっぱいでした」

 そういった真剣なメッセージソングが、当時のレコード売り上げ以上に、今のリスナーに響いているのかもしれない。そう伝えると、酒井は時代背景を読み解いて、以下のように考察を加えた。

「この楽曲は、《誰か教えてすぐに こんなハズじゃない ノレない青春 お断りっ!》と、少女の葛藤が力強く描かれています。表現方法は異なりますが、中森明菜さんやアン・ルイスさんもカッコいい系の人気曲がありますから、この時代らしいというのも人気の理由なのかもしれませんね。でも、確かに力みすぎて、サビでは声が裏返りそうになっているから、母からは“あなたの歌を聴いていると、肩が凝るわ!”って言われたこともありました(笑)」

酒井から飛び出す爽快エピソードの数々に、スタッフも爆笑! 撮影/矢島泰輔