「お願いダーリン」「ウインクに染めて」意外な2曲が上位のワケを考察
そしてSpotify第8位には、世界初のVHDソフトでのデビュー曲となった「お願いダーリン」がランクイン。こちらは、本格デビューの約3か月前に発売され、大々的にデビュー曲とされている「男のコになりたい」(第13位)よりも上位となっている。
「『お願いダーリン』は、所属しているビクターさんが考えに考えて、“世界初”という華を持たせてくださいました。VHDは当時、カラオケの機械などで映像が出て音楽が流れるというソフトで、おそらく一般の家には存在しなかったんじゃないかな? その中で、“エイリアンハンターP”として、キャラクターの女の子を私が演じ、小中和哉監督に撮っていただいたんです。テレビではあまり披露していませんが、デビュー前後のライブではよく歌っていましたね。思えば初めての誕生日イベントがなぜか後楽園ホールのリングの上で、スタッフに騎馬戦のスタイルでかつがれながら入場しました(笑)。とにかく、“のりピー”というキャラクターでみんな遊ぼうと考えていたんでしょうね。(第54位の)『のりピー音頭』がその頂点でした(笑)」
ちなみに、「お願いダーリン」の海外リスナー比率は約8割。国・地域別ではアメリカ、日本、メキシコ、の順で、なんとアメリカでの人気が日本を上回っている。シティポップにも通じるキラキラなサウンドが海外に支持されて、デビュー曲以上の人気となっているようだ。
さらに、Spotify第11位に'88年のアルバム『Lovely Times』より「ウィンクに染めて」がランクイン。アルバムの先行シングルとしてオリコンにも5週間TOP10入りしたヒット曲「1億のスマイル」とほぼ横並び、という大健闘ぶりだ。陽気なサウンドとムーディーなリズムが特徴で、こちらも海外リスナー比率が約8割でアメリカ、日本、カナダで人気となっている。これを本人に伝えてみると、彼女なりに考察してくれた。
「『1億のスマイル』はASKA(飛鳥涼)さんの作曲だけど、『ウィンクに染めて』のほうは、CHAGEさん作曲。CHAGEさんのほうが提供作が限られている分、その中で私の作品がたまたま検索されやすかったということもありませんか? この曲はとてもゆったりしている心地いい曲で、ライブでも当時歌っていましたね」
確かに、ストリーミングサービスではアーティストを検索する際、提供した楽曲が検索候補に挙がることも多いので、その可能性もあるだろう。この『Lovery Times』は、アルバムジャケットからもわかるように、ロンドンでの録音ということも話題となった。
「当時、“ヒットすれば、なぜか海外へ行けちゃう”というメリットが発動しまして(笑)、音源は日本で作っていたものを持っていき、歌入れだけ向こうでさせてもらったのですが、新鮮な気持ちで取り組めましたね。写真集の撮影も入っていましたし、『1億のスマイル』でランキング番組に入ったときには、現地から中継で出演できたのも貴重でした。当時は日本食のレストランなども少なくて、現地でお味噌汁を作って食べたのも懐かしい思い出です」
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今回も、自身の楽曲がなぜ「いま」ヒットしているのかを、当時の経験を交えてさまざまな角度から即座に考える、という酒井の瞬発力に驚かされた。それは、バラエティー番組やライブイベントで瞬時にレスポンスする経験を積んできたからなのか、あるいは、マルチタレントとして多くのアイデア出しを求められてきたからだろうか。いずれにせよ、35年の芸能生活で学んだあれこれが、インタビューの随所から垣間見えることが感慨深い。ラストとなる次回は、最新アルバム『Premium BEST』についても語ってもらおう。
(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)
【PROFILE】
酒井法子(さかい・のりこ) ◎1971年、福岡県生まれ。1987年2月5日、シングル「男のコになりたい」でレコード・デビュー。以来、ミリオンセラー「碧いうさぎ」を始めとし、多くのシングル・アルバムを発表。また、女優としてテレビ・映画・CMでも活躍。中国・香港・台湾をはじめとするアジア各地でも人気を博し、現地でのコンサートも成功させている。2023年7月には35周年記念ベストアルバム『Premium Best』をリリースし、日本各地でのイベントも開催。
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◎酒井法子 公式Instagram→https://www.instagram.com/noriko_sakai_official/