念願の『ザ・ベストテン』はスケールの大きさに感激、緊張ゆえの“苦い思い出”も

 この「話しかけたかった」は、音楽番組『ザ・ベストテン』(TBS系)にてシングルレコード部門に加え、ラジオリクエスト部門でも1位となり、総合で初の1位を獲得し、サプライズで読まれた母からの手紙に感涙した放送回もあった。『ザ・ベストテン』は、本人の思い入れが、とても強い番組だったという。

「もちろん、どんな番組で歌えることもうれしかったのですが、特に『ザ・ベストテン』にはいつか出たいと思っていました。でも、小さいころ、夜の9時を過ぎるとテレビが消されてしまう家庭で育ったので、(第10位からカウントダウン形式で発表される中で)早く出ないと小さな子が見られなくなっちゃう! とドギマギしていた覚えがあります。

『ザ・ベストテン』は、司会の黒柳徹子さんがわれわれのような若手にも丁寧に接してくださるので、こちらも気が張って、敬語じゃなければいけない、というか、敬語でいたいと思っていました。また、あれだけ豪華なセットがひとつのスタジオの中で組まれるので、セット転換を見るだけでも毎回勉強になりました。コマーシャルが流れる1分半の間、スタッフの声が飛び交う中でどんどんセットが組まれていくのをミラーゲートの後ろで見ながら、“次は私だ!”って待っているのもすごくドキドキしましたね。セットでは、キョンシーが飛び跳ねる中で歌った回や、本物の動物と一緒に歌っている最中に、その子が粗相をしてしまったトラブルが印象に残っています。

 本番ではとても緊張して、思った以上に歌えなかった思い出が多いです。自分の歌詞の世界に入ってしまうと、それを思い描きすぎて違う情景まで見えてきてしまい、歌が止まっちゃうこともありました。実際、『秋からも、そばにいて』の歌唱で歌詞が飛んでしまったときも、みなさん、私のことを祈るように見てくださっていたというのをよくお聞きしますね

「いや〜、あのときはホントに頭の中が真っ白でしたね〜!」と笑う 撮影/矢島泰輔

『夜ヒット』では先輩方の会話にビビり、『Mステ』では“風船の洗礼”を受ける

 その他の番組も、それぞれに独特な雰囲気を楽しんでいたという。

『ザ・トップテン』(日本テレビ系)は渋谷公会堂からの放送だったので、ざわざわと始まって、ざわざわと終わる、一瞬の輝きやライブ感がありましたね。日テレ音楽学院のダンサーさんや、生花を使ったセットが印象的でした。

『夜のヒットスタジオ』は、3分ちょっとの持ち時間で2コーラスまで歌えるのがいいのですが、それはそれで、“しまった、間奏の振付を考えてない!”ということもあって大変でした。あと、後ろに先輩方が座っている状態で歌うのも実は苦手で。あの席では、実際に“この曲は売れるね~”とか“今回の衣装はなんでこんな形なんだろうね”とか自由な会話が繰り広げられていて、私のときはいったい何を言われているんだろうって気になりましたね(苦笑)。

 体調を崩した後、復活して『微笑みカプセル〜Don't worry my friend〜』(第55位)を歌った回があるのですが、退院してきたということで、果物かごのセットでした。あと、『メリー・クリスマス』(第48位)を歌ったとき、ジーンズに白のタートルネックという自然なスタイルで歌ったら、少年隊のカッちゃん(植草克秀さん)に“衣装、忘れたの? かわいそうに……”って言われたのを覚えています(笑)。当時のステージ衣装は、煌(きら)びやかなのが当たり前でしたからね。

 そして『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)のセットは、灯りと風船が中心で、歌っている最中にライトの熱で風船がバン! バン! と割れるんですね。そういったノイズはテレビには乗らないのですが、私の耳には破裂音が聞こえたり、足元で急に割れたりして大変でした

 各番組の特徴が言えるというのも、それだけレギュラー的に何十回と出演したからこそのスターの証と言えるだろう。

出演者だからこそ語れる裏話に、スタッフも興味津々! 撮影/矢島泰輔