南野陽子が語る『ザ・ベストテン』と『スケバン刑事』の“裏話”がアツい「土佐弁は高知のみなさんに謝りたい」

『スケバン刑事』主題歌4曲がTOP10に！ 土佐弁とアクションは難易度大だった

　ランキングに戻ると、Spotify第4位に「楽園のDoor」、第5位に「悲しみモニュメント」、第6位に「さよならのめまい」、そして第10位に「風のマドリガル」と、いずれも映画やテレビの『スケバン刑事II　少女鉄仮面伝説』テーマ曲がランクイン。特に、オリコン＆『ザ・ベストテン』にそれぞれ初めてTOP10入りした「悲しみモニュメント」と、初めて同タイアップとなった「さよならのめまい」は、ファンにとっても思い入れが強いのか、当時のシングル売り上げ順より大きくジャンプアップしている。

「やっぱり、主演も務めた『スケバン刑事』で私のことを知ってくださった方が多いんでしょうね。この4曲の中では『悲しみモニュメント』が、ランキングで上昇していったことや、イントロの“デデッデデッ、デデッデデッ”という部分から勢いを感じられることもあり、特にテンションが上がります。

『さよならのめまい』も、初めて自分の曲が闘いのシーンで流れているのを見て、鼻の奥がツーンときた覚えがあります。来生たかおさんのメロディーは、流れがなだらかで感情が込めやすいんですよ。

『風のマドリガル』は、歌っていた期間や路線がちょっと中途半端な時期だったので、あまりオンエアにも乗らなかった歌ですが、スケールが大きくて好きなタイプの歌ですね。

（初のオリコン1位となった）『楽園のDoor』がヒットしたという意識は自分ではなかったのですが、ソニーの販促担当の方たちが現場にいらして、おめでとうと祝ってくださったり、周りのスタッフの人数がどんどん増えていったりするうちに肌で感じました。おそろいの赤と黄色の特製スタジャンを着て、ハンティングワールド風の手帳を持っている人たちがスタジオに集まると、とてもうれしかったです！」

『スケバン刑事』シリーズ4曲はそれぞれに思い出深いことがわかったが、「おまんら、許さんぜよ！」を決め台詞とする土佐弁や、セーラー服でのアクションなど、撮影面ではどんな苦労があったのだろうか。

「方言は、（自分がしゃべっていた）あれを土佐弁と言うには、高知のみなさんに謝りたいほどで……。第1話だけは吹き込まれたテープで練習したのですが、第2話以降は関西弁の語尾に“ぜよ”とか“やき”とかを付けていただけのような形になってしまい、できれば四国の方には会わずに終えたいと思っていました。そうは言っても、その後、（土佐が舞台の映画）『寒椿』でまた頑張りましたけど。

　アクションのほうは、さらに大変でしたね。特撮ものは時間に追われるし、何かと工夫がないと撮影が進まないし、スタッフの方と満身創痍でやっていました。火薬の発火とでんぐり返しのタイミングが合わないとケガをしちゃうので、気を引き締めていましたが、それでも傷だらけだったし。他の撮影や歌のお仕事で忙しい中、1年半も撮影が続いたら、どんなに好きな人でも疲れてきますよね。“ああ、今日も最初から破れて血のりのついたセーラー服に着替えるのか……”と思うと、気分がどんよりしてきて切なかったです。

　しかも、当時の作品はフィルムで撮影していたんですよ！　同時期に、中山美穂ちゃんもドラマで大忙しでしたが、美穂ちゃんは最初からVTRでマルチカメラによる撮影だったと思う。でも、フィルムは、だいたいワンカメ（カメラ1台）の撮影で、その場でチェックもできない。数日後にフィルムを焼いてからチェックして、“目を閉じているから”とか“マイクが映っていたから”とかの理由で撮り直しがあり、その分だけ時間がかかりましたね。でも、これだけ多くの人が曲のほうも覚えてくださっていることは、今でも大きな支えになっています」

南野は「ファンの方々には本当に感謝しています」と語気を強めた　撮影／矢島泰輔

　南野のアイドル時代のエピソードは、確かにテレビや映画の中を生きていた人たちのものだが、それぞれの場面における南野自身の感情が乗ることで、まるで彼女にまつわるドキュメンタリー番組を観ているようで興味深い。それだけ彼女は、歌であれ芝居であれ、表現することにこだわりを持っていたということが改めてわかる。次回は、彼女が大好きな季節という秋の名曲や、デビュー曲「恥ずかしすぎて」について触れていきたい。

（取材・文／人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝）

【PROFILE】
南野陽子（みなみの・ようこ）　◎1967年生まれ、兵庫県出身。愛称は「ナンノ」。1985年、CBS ソニーより「恥ずかしすぎて」で誕生日デビューし、ドラマ『スケバン刑事II 少女鉄仮面伝説』でブレイク。“アイドル四天王”のひとりとして圧倒的な人気を誇る。現在は歌手活動のほか俳優業にも精を出し、2023年には映画『ネメシス　黄金螺旋の謎』や舞台『泣いたらあかん』などに出演。他にも2022年に京都府舞鶴市でお米作りを始め、2023年には日本カンボジア友好関係70周年親善大使に任命されるなど、多方面で活躍の場を広げている。

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