藤丸の一人語りと、意気投合した綾と竹雄の関係に泣ける

 最終回に向けての筋道は見えた。問題は、万太郎がどう動くかだ。実はこれも見えている。私の想像では、たぶん何もしない。十徳長屋で標本を整理していると、いろんな人がやってくる。そこからドラマが起きて、最後は成功へ。そう予想する根拠は、それが万太郎だからだ。

 23週もそうだった。まず綾と竹雄が上京し、長屋近くで屋台を開いた。万太郎と寿恵子が食べているところにやってきたのが、藤丸(前原瑞樹)と波多野(前原滉)だ。そこから、「醸造学」の話になる。酒造りをあきらめていない綾と竹雄が、醸造を研究する学者を知らないかと2人に尋ねる。手を挙げたのが、藤丸だった。

 東大を卒業し、菌類の研究ができないか探したがどこにもなく、今は実家の酒問屋を手伝っている。それが藤丸の現在地だ。だから、手の挙げ方が奥ゆかしい。「もう1杯、飲んでいく」と万太郎と波多野に言って、屋台に残る。何のお酒がいいかと綾に聞かれ、綾と竹雄が造る新しい酒がいい、と答える。わかりにくいが、これが挙手なのだ。

 そこからなぜか、「俺、きっと無理なんですが」と言う。「おいおい」とツッコミたくなるが、ここからの藤丸のセリフが聞かせた。無理なのに研究がしたくなった、菌類なら何でも好きなのだ、醸造と菌類の研究はまったく違うから一から学ばねばならない、だけど外国の文献を読むことならできる。藤丸の声は甘えん坊の声。そうずっと思っていた。その声のまま、一気に語る藤丸。優しく、メンタルが弱い。だけど心では、何かを成し遂げたいと思ってきた。それが伝わってきて、ちょっと泣けた。

 綾は藤丸をまっすぐに見て、小さくうなずいていた。そしてこう言った。「新しい酒の注文、承りました。きっとうまいです。私らの学者先生と造るがですき」。竹雄が「藤丸さん、よろしゅうお頼み申します」と続けた。相当泣けた。勝ち組じゃないけど心優しい者同士が、ともに歩んでいこうとする。こういう場面に私は弱い。

『らんまん』竹雄役の志尊淳と、綾役の佐久間由衣