2023年4月に26歳を迎えた桜井日奈子さん。初主演を飾った映画『ママレード・ボーイ』(吉沢亮さんとのダブル主演/2018年)をはじめ、『ういらぶ。』(2018年)、ドラマ『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレビ朝日)『マイルノビッチ』(Hulu)など、人気コミック原作の実写化作品に多く出演してきました。
そんな桜井さんが、公開中の映画『魔女の香水』で、これまでとはガラリと違う大人の女性の物語を見せてくれています。
桜井さんが演じるのは、香水店を営む「魔女さん」と呼ばれる女性・白石弥生(黒木瞳)との出会いから香りの世界へと導かれたことをきっかけに、自らの手で人生を切り開いていこうと歩みだす女性・若林恵麻。
桜井さんは、20代の女性が仕事に恋愛に思い悩む姿をまっすぐに演じ、大人っぽい大胆演技にも挑戦しています。
そんな桜井さんに、本作の印象にはじまり、芸能活動10年目を迎えた自身の歩みを振り返ってもらうと、デビュー後ほどなく、CM出演(大東建託『いい部屋ネット』)によって覚えてもらえた自分は、ラッキーだった分、「どこか“逃げ”の気持ちがあった」と、素直な心の内を明かしてくれました。
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「そのときが来た!」初の大胆ラブシーンにも挑戦
――本作では、これまでのイメージにない大胆なラブシーンが登場して、正直かなりビックリしました。
そうですよね。私も、ついに「そのときが来た!」と思いました(笑)。これまで、そうした大胆なラブシーンには挑んできていませんが、女優というお仕事をしているのだから、積極的にと言ったら変ですけど、今までも“作品に必要であれば”という気持ちではいました。
私ができないと言うことで、作品の幅が狭まるのは嫌ですから。なので、今回挑戦できてよかったと思っています。
――とはいえ、最初に台本を読まれたときは?
緊張しました。今回、大人な恋をするので、台本を読むだけでは理解できない箇所が多かったんです。“なぜ私はこの人に惹(ひ)かれたんだろう”“なぜここでこの言葉が出るんだろう”と。
特にベッドシーンへの流れでは、わからないことが多くて不安でした。でも撮影当日、実際にお芝居してみたら、それほど気になりませんでしたね。
――大人へのステップを上がった感じですか。
上がりましたね(笑)。
派遣社員として働く普通の20代女性が起業するまでの成長を演じた
――台本を読まれた際の、映画全体への印象はいかがでしたか?
上質で上品な、大人な作品だと思いました。これまでマンガ原作の女子高生という役が多かったので、こうした作品に出合えたことが嬉しかったです。
黒木さんとは、連続ドラマのデビュー作『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ系)からご一緒していて、これで3作目なんです。でも、しっかりとお芝居させていただくのは初めて。感慨深かったですし、嬉しかったです。
――今回、演じた恵麻は、男性社会の中でも、間違ったことは間違っているときちんと言える女性ですね。
すごく勇気のある女性だと思いました。それによって自分の仕事を失うかもしれないのに、自分を犠牲にしてでも、間違ったことには意見する。たぶん私はできないんじゃないかな。
――そうですか? 桜井さんにも実は、体育会系な、スパッとしたところがある印象があります。意見することで、結局クビになった恵麻は、やがて自分で会社を立ち上げることになりますが、桜井さんは社長としてみんなを引っ張ることはできそうですか?
うーん、憧れますけど、難しいですよね。すごい責任を背負ってやっているわけですから、そんな度胸が私にはあるかな。なんだかんだ、私はやっぱり守られている中で力を発揮しているほうが合っているかなと思います。
ただ(性格的に)社長は無理だけれど、いい右腕にはなれるかもしれません。私、すごく運がいいと思っていて。私を横に置くと、新会社がどんどん成長していくかもしれませんよ(笑)!?
デビュー当時のマネージャーの言葉を支えにプラス思考へ
――それはいい。考え方もステキです。普段からそうした姿勢で行動しているのでしょうか。
そうですね。運だけはいいので、普段から自分に思い込ませて、よいことは言葉にするようにもしています。言霊は信じていますね。
デビュー当時からついてくれていたマネージャーに「言葉にはすごい力があるから、いい方向に進みたいなら、なんでもプラス方向、プラスの言葉に変換しなさい」と言われてきたんです。
ただ、そうは言っても、イヤなことがあってため息をついちゃうことだって、どうしてもありますよね。そんなときも、“3秒以内ならセーフ”というルールを作っています。3秒以内に、ついちゃった息を吸う。それでナシ。ノーカウントです。
――あはは! なるほど。いいルールを聞きました。
私は、それでずっとやってきています。3秒以内ならセーフです。
――恵麻も、「魔女さん」こと弥生さんからいくつもアドバイスをもらいます。桜井さんは、どの言葉が特に印象に残っていますか?
「社会を憎んでも仕方ないのよ。変われるのは自分だけよ」というセリフが、本当にそのとおりだなと、グッと刺さりました。誰かのせいにしてしまうと成長がない。そうではなくて、自分はどうすればよかったのかと、視点を変えると前に進める。
次に同じようなことにぶつかったときの対策ができる。そういった考え方は、私自身も大事にしながら仕事をしていることもあって、特にそのセリフは刺さりました。
デビュー当時の甘えと逃げていた自分
――さて、桜井さんは芸能界に入られて今年で10年目になりました。改めて振り返って、こうした点は変化したと感じるところはありますか?
仕事に対しての向き合い方です。10年前は全然違ったと思います。デビュー当時の私はというと、CMの印象が強かったのかなと思います。本当にありがたいことに、それこそ運が強かった。それが、当時の自分には甘えにも働いてしまった面がありました。
すごく頼れるマネージャーがついていてくれて、その人が愛を持って、私に厳しい言葉をかけてくれているのに、私自身の覚悟がないままに、幸運にもお仕事を始められてしまって。“自分自身で頑張る”という気持ちを持つより先に、世に出てしまった。
そのことで、例えば少し評判がよくなかった時期があったりすると、“別に私は、この仕事でやっていかなくてもいいし……”と、どこか“逃げ”の気持ちが出てしまっていたんです。それがつらかったです。
――自分の中に、“逃げ”の気持ちが出てしまうことがつらかった。
はい。でもいまは、いろいろお仕事を重ねていくなかで、ちゃんと責任を背負いながら、自分自身がどうしたいのか強い意志を持ちながらでないと、立てない仕事だとわかっています。
この世界にはものすごく才能のある人がたくさんいて、「女優でやっていきたいんだ」と強い覚悟のある人がたくさんいる。そのなかで、一つひとつのお仕事を、“やらされているのではなく、自分がやりたくてやっているんだ”と、思ってやるようになりました。そこが10年前とはまったく違います。
――いまのCMのお話もそうですが、桜井さんといえば、それこそデビュー当時、「岡山の奇跡」と呼ばれて大きな注目を浴びました。正直、重荷になった時期はありませんでしたか?
ありました。紹介されて、「そうです」とも言えないし、でも「違います」と言うのも違いますし。なんて答えていいのかわからなくて困りました(苦笑)。
相変わらず、その紹介のされ方はどうしていいのか戸惑いますが、でもそれで覚えていただいたのは事実ですから。そこからもう何年もたっていますし、そう呼ばれなくても、ただ「桜井日奈子」で浸透するようにしていきたいと、そう思っています。
(取材・文/望月ふみ、編集/本間美帆、ヘアメイク/白水真佑子、スタイリスト/入江未悠(LINX))
【PROFILE】
桜井日奈子(さくらい・ひなこ) ◎1997年4月2日生まれ、岡山県出身。2014年「第1回おかやま美少女美人コンテスト」で美少女グランプリを獲得し芸能界デビュー。“岡山の奇跡”と注目を集める。2015年大東建託の『いい部屋ネット』のCMで全国的な知名度を獲得した。2016年に『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ系)で連続テレビドラマの初出演を果たし、2018年に映画『ママレード・ボーイ』で初主演を飾った(吉沢亮とのダブル主演)。近年の主な出演作に、映画『任侠学園』(2019年)『殺さない彼と死なない彼女』(2019年)など。話題作の映画『キングダム 運命の炎』の公開も2023年7月28日に控える。Twitter→@hinako_incent、Instagram→@sakurai.hinako_official