「表情筋トレーニング」。表情筋エクササイズとも、フェイササイズとも呼ばれ、あのイヤなほうれい線やゴルゴ線、マリオネット線にも効果絶大とうわさされるこのトレーニングだけど、ホントに効くの!? 第1弾(《表情筋トレーニングの真相調査#1》“マスク禍”で進む「顔のたるみ」は止められる? 皮膚科専門医に聞く)に続き、今回は表情筋トレーナーの方にお話を聞き、そのリアルに迫る。
日本人は表情筋の2~3割しか筋肉を使っていない
第1弾で紹介したように、「表情筋トレ」は、皮膚科専門医・小柳衣吏子先生からもポジティブな評価が下された。とはいえ、小柳先生が提唱する「笑ったり、しゃべったり、カラオケで歌ったり」はもう大好き! これだけで十分なのでは? なんて思ったりもするんだけど……。
「表情筋を使えているか確認したいなら、ご自分が話されているときの顔をスマホで撮ってもらってください。上の歯が隠れて見えていない状態になっていませんか? これは頬の表情筋が使われていないから。日本語は英語や韓国語、中国語に比べて、口を動かさなくても伝わる言葉とされていて、そのぶん、日本人は表情筋を使わない傾向にあるのです」
こう語るのは、表情筋トレーニングのオリジナルメソッド「tokko式表情筋トレーニング」を提供する表情筋トレーナーの石川時子さん。
私たち日本人には欧米人の表情は時におおげさでオーバーアクションぎみに見えてしまうが、そんな欧米人でさえ、石川さんによると、7~8割程度しか表情筋を動かしていないそう。ましてや、つい最近まで歯が見えるような笑顔は下品とさえされていた日本人にいたっては、なんと2~3割程度。
「加えてこのマスク生活で、会話も表情も抑えぎみに。さらにはYouTubeやTikTokなどをスマホで見ることで、じっと下を向く時間がますます増えています。身体だって動かさないと凝り固まって硬くなりますよね。顔もまったく同じです。意識して動かしてあげることが大切なんです」(石川さん)
とはいえ、筋肉は何歳であっても鍛えることができることが知られている。これは表情筋も例外ではないと石川さん。身体を鍛えることでハリのある肉体を保つことができるように、顔の筋肉を鍛えることで、あのイヤなほうれい線やゴルゴ線、マリオネット線と縦のラインを予防したり、改善するのは可能と言うのだ。
では、表情筋トレーニング、具体的にはどんなことをすればいいの──?
頬とアゴの筋肉を中心に、1日1分間の筋トレを根気よく
●口角アップ 1分間エクササイズ
「わりばしを使うことで頬に負荷をかけます。この状態で表情筋の大頬骨筋を動かすことで、口角を引き上げる力を養い、頬を自然に引き上がりやすくします」(石川さん)
【1】わりばしを左右の糸切り歯で軽くくわえ、わりばしよりも左右の口角を上に上げて25秒そのままにします。
【2】わりばしをくわえたまま10秒間休憩します。
【3】1をもう1度行います
●二重アゴ防止 1分間エクササイズ
「口を尖らせるとアゴに梅干しのようなしわができるところをオトガイ筋といい、ここの筋力がたるむと二重アゴにつながります。このオトガイ筋と、アゴの下に板状に広がる顎舌骨筋を鍛えることで、二重アゴを予防し、できてしまった二重アゴを改善します」(石川さん)
【1】姿勢を正して鏡を持ち、顔を上に引き上げます。
【2】くちびるを尖らせながら、5秒間、アゴの先に力を入れます。
【3】2の状態を5秒間キープします。
【4】口を閉じながら、5秒間かけて顔をゆっくりと元の位置に戻します。
やり過ぎ&無理は禁物。メイクやお風呂の合間に気楽に続けて!
石川さんが提唱する表情筋トレには、先の2つ以外にも悩みに応じたトレーニングが用意されているが、まずは小柳先生も推薦するこの口角アップと、二重アゴ予防と改善からトライしてみよう。
「注意点としては、身体が覚え込むまでは、必ず鏡を使うこと。鏡を見て、自分のお顔が紹介したイラストと同じ状態になっているかを確認しながら行ってください」(石川さん)
「たるみなんか、早くなくなれ~!」と思う女性は多いけれど、だからと言って、1分でOKの表情筋トレを何十分も続けたり、あるいはやり忘れを思い悩んだりするのは禁物だ。
「私は朝のお化粧の間、ローションを塗ったあとに行っています。湯船の中で行うのもいいですね。忙しくてできない日があっても気にしない、気にしない。セミナーに参加された生徒さんには、“3日は空けないでくれればOK”と伝えています」(石川さん)
表情筋トレでは、過剰な回数を長時間やるのはむしろ逆効果。「ながら」でいいから、気になる部分の1分間の筋トレを、毎日根気よく続けるほうが大切なのだ。石川さんはこのトレーニングに出合ってから10年以上、毎日実践している。
「私はお掃除のとき、口角を上げてするようにしています。はたから見たらちょっと不気味かもしれないですけどね(笑)。経験上、表情筋トレは、2週間も続ければ効果が出ます。生徒さんにお聞きすると、効果は“小顔になった”“笑顔が変わった”“小顔になったねと言われた”という感じで現れることが多いようです。始める前に、before写真を撮っておくとよくわかると思いますよ」(石川さん)
日常生活でたるみを防ぐ!
さて、表情筋のゆるみからくる顔のたるみ、あのほうれい線やゴルゴ線、マリオネット線防止は、日常生活を注意することでも予防したり発生を遅らせたりできると石川さん。
「私が日常的に気にしているのは枕ですね。高さに注意するのはもちろん、寝ているときはなるべく上を向いて寝るようにしています。横向きで寝ると下になっている顔半分がつぶれますし、上の顔半分が垂れます。人生の3分の1は寝ていることを考えると、結構な時間、リスクにさらされていることになりますから」(石川さん)
さらには咀嚼(そしゃく)にも注意するようにしたい。
「かみぐせが表情に出ている生徒さんが多いですね。物をかむときには右だけ・左だけでかまないで、両方同じようようにかむようにしてください」(石川さん)
ついついふけりがちなスマホやパソコンは、たるみ予防の面からはもう最悪!
「スマホを見るために下ばかりを見ていると、アゴのフェイスラインがたるんでだんだん首とつながっていくんです。これがいわゆる『スマホ顔』です」(石川さん)
スマホ顔は10代でも起こりうるたるみの一種で、スマホ顔を放置しておくと、頬の肉のたるみがさらに進み、口角の横に肉が垂れ下がる「ブルドッグ顔」へと進行する。さらには額の表情筋もゆるんで眼瞼下垂(がんけんかすい/まぶたが垂れ下がって見にくくなる病気)も発症しやすくなるというから、恐ろしいではないか。
スマホ顔や眼瞼下垂の予防には、スマホやパソコンを見る際はできるだけ顔を下に下げないようにすることが大切。具体的にはスマホやパソコンの下に台を置くことで、できるだけ目線をまっすぐに保つよう心がけよう。専用台を使うのもいいが、お菓子の空き箱や、読み終えた雑誌を何冊か使うことで対応することもできると石川さん。
「生徒さんの中には、出勤前に遠くを見ながら目を見開いたり、出勤途中の車の中で、信号待ちの時に表情筋トレをすると語る方もいらっしゃいます」と石川さんは言う。
老いはかならず、すべての人にやってくる。避けられないものであるものの、できることなら穏やかに、緩やかに年齢を重ねていきたい。そのためには身体各部の若々しさを長く保つことが欠かせないけれど、内臓も血管も、自分で鍛えることはできない。唯一、筋肉だけが、意識次第で鍛えることができるパーツなのだ。
昨今、穏やかに緩やかに年を重ねたいと願う人が増えるにつれ、男女を問わず身体の筋トレにトライする人が増えているそう。そこに1分間、表情筋のトレーニングをプラスするのもいいんじゃない?
(取材・文/千羽ひとみ)
〈PROFILE〉
石川時子(いしかわ・ときこ)さん
1973年生まれ。表情筋トレーニングのオリジナルメソッドを提供する株式会社クレア代表。
Beautiful Smile協会理事。表情筋トレーナー。2011年、表情筋トレーニングと出合い、アシスタントなどを経て2015年にプロ講師に。見た目も中身も生まれ変わる塾として、オーダーメイドの表情筋トレーニングを一般向けから芸能コースに通う10代男女向け、40代ママ向けレッスンのほか、セミナーや大手コスメメーカーや保険会社の企業内研修、TV、雑誌、Web監修など多岐な場面で活躍中。著書に『顔が上がる↑ 1分間×表情筋トレ』(大和書房)