大人になるとやってくる恐怖のイベント「同窓会」。
高校、大学の同窓会ならまだ近況も予想ができるので会う気もおきるけど、小学校と言われると年数が開きすぎてどんな話をしていいのやら。会っても誰だかわからないだろうし、何より自分のこと忘れられているという不安もよぎる。
同窓会って一生行かなくて済むものなの?
わかります。ものすごくわかります。同窓会は恐怖のイベント。よみがえる黒歴史。忘れられている恐怖。そもそも何の話をしていいのか全く想像ができない。
結論から言いますと、同窓会は行くべきです。
どうしてか?
大丈夫。それ、懐ゲーで経験してますよ。
今回紹介するタイトルは、誰もが知っているゲーム界の金字塔「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」です。1988年に発売され、今もなお傑作と評価されているすばらしいゲーム。
職業システム、昼と夜、空飛ぶ移動方法にカジノなど、当時では画期的でおもしろい遊びがこれでもかというほど詰まっていました。そのゲームシステムとストーリーだけでも十二分に素晴らしいのですが、ドラクエ3を最高傑作にしているのは前作にあたる「ドラゴンクエスト」と「ドラゴンクエストII」との関係性を描いた点にあります。
前作までは、世界を救う達成感やかっこよく敵をやっつける爽快感が良いと評価されていましたが、本作ではこれに加えて新しい感動体験が得られるのです。
それは「ふるさとに帰る安堵(あんど)感」です。
回帰することで強いエネルギーをもらえる
ドラクエ3の世界をくまなく歩きまわり、ゲームが後半にさしかかると、なんと舞台はドラクエ1の舞台である「アレフガルド」という大陸に移ります。
ドラクエ3の勇者がアレフガルドに現れることで、“勇者に与えられる称号”ロトとその系譜といえるロトシリーズの秘密に迫ることになるのですが、このアレフガルドに足を踏み入れたときに何とも言えないホッとした気持ちがする人が続出。
「え? これってドラクエ1の世界じゃね?」
「すごい! 1の世界に帰ってきたぞ!」
足を踏み込んだ大陸がアレフガルドであることがわかると強い感動を覚えます。まさにふるさとに帰ってきたような感覚、郷愁の念、ノスタルジアが押し寄せるのです。
ドラクエ1をプレイしたことのあるユーザーはもちろんですが、未経験のユーザーですら聞きかじりの情報でこのアレフガルドに強い安堵感を覚えたものでした。その感覚はもう遺伝子が反応するレベルの説明無用のもの。
ドラクエ3のシナリオの大きな見せ場ともいえるこのアレフガルドへの回帰は、人間の本能を説明づけるものと言えます。
「過去作の舞台」=「物語の原点、ふるさと」という構図がプレイヤーの脳内にできあがるのでしょう。
同窓会というのは、あなたがかつていた場所、つまりアレフガルドです。回帰することで安堵感に包まれ、強いエネルギーをもらえることでしょう。
久しぶりの再会は、なにかと面倒に考えがちですが、いざ飛び込んでみるとドラクエ3で感じたような感動が押し寄せるはずです。
さあ、勇気を振り絞ってアレフガルドに飛び込みましょう。
ただし、アレフガルドには最大の敵、大魔王ゾーマがいるということをお忘れなきよう。
そして今、あなたがいる場所もやがてアレフガルドと呼べる日がやってきます。
今がどんなにつらくてしんどくても、数年後に戻ってきたときにあなたに安堵感を与えてくれる場所にあなたはいるのです。
心にいくつものアレフガルドを持って、何かと厳しい現代社会も生き抜いていきましょう。
(文/野中大三)
《PROFILE》
ゲームとプロレスをこよなく愛するコラムニスト兼ドット絵師。電子玩具開発を経て、株式会社カプコンでテレビゲームのプロデューサーを務め、オリジナルタイトルや人気シリーズタイトルのプロデュースを手がける。現在も電子ゲームの開発に携わっている。35年にのぼるプロレス観戦歴とゲームプレイ歴の経験から日本最大のプロレス団体、新日本プロレスオフィシャルサイトでコラム「ゲーム的プロレス論」を連載中。プロレスラーをドットで表現する「dotswrestler」をTwitterで公開中。
※「懐ゲー的処世術」シリーズは今回が最終回です。