食後に眠く、身体がだるく感じる人、最近太りやすい人、は要注意。それ「血糖値」の影響かも! 加齢や糖質のとりすぎなどで血糖値が上がりやすくなると体重が落ちにくくなるほか「糖尿病」さえ招きかねない……。見直すのは日ごろのちょっとした食事習慣。食生活が乱れやすい年末にかけて、しっかりセーブしましょう。
「眠い」「ダルい」は高血糖のサイン
年末年始は何かと食べる機会が多いもの。しかも、外は寒く動く気もうせる季節。「多少太っても仕方ない」と思いたいところだが、注意したいのは肥満だけではない。
「食事をすれば血糖値が上昇するのですが、血糖値の急激な上昇を繰り返していると、身体に大きな負担がかかってしまいます」とは糖尿病専門医の櫻岡怜子先生。
“血糖値”と聞いて思い浮かぶのが糖尿病。厚生労働省の発表によると、糖尿病が強く疑われる人と予備群の人を合わせると2000万人以上に及ぶといわれている。
「実際に糖尿病患者は増加傾向にあります。予備群も合わせると、50歳代では5人に1人、60歳代では3人に1人といわれるほど多く、今や国民病ともいえるのです」(櫻岡先生、以下同)
主な原因はやはり食事で、年末年始にやってしまいがちなダラダラ食べはまさに危険な習慣。血糖値を爆上げさせてしまう行為といえるのだ。
「食事をし始めてから約2時間かけて血糖値が上昇し、その後2時間かけて下がっていきます。昼の12時に食事をしたら、下がるのは16時以降。けれども15時におやつを食べれば、下がる途中の血糖値を再び上昇させてしまい、夕食を食べるときには、すでに血糖値が高い状態に。この状態で夕食をとれば、夕食後の血糖値は普段よりもかなり高くなってしまうのです」
数値でいうと食後に血糖値が140を超えるようであれば、高血糖といえる。
「食後にダルくなったり眠くなる場合は、140を超えている可能性が。食事を見直す必要があるといえそうです」
更年期女性は特にリスクアップ!
血糖値が高いとなぜ身体によくないのだろうか。糖を摂取すると、小腸を経て肝臓へ運ばれ、エネルギー源として利用される。そして余った糖は血液中に入り“血糖”となる。このときインスリンが分泌されて、筋肉や脂肪細胞に糖を取り込むように促し、血糖値を下げる。
けれども必要以上に糖を摂取すると、糖は脂肪細胞にどんどんと取り込まれ、脂肪細胞は肥大化。つまり、肥満となってしまう。さらに過食を繰り返して血中に糖が残れば、インスリンも追いつけない状態となり、糖尿病を引き起こしてしまうのだ。
「もともとインスリンが出にくく、やせているのに糖尿病という方もいますが、肥満になるとインスリンは分泌しにくくなる特徴があります。血糖値もより上がりやすくなり、負のスパイラルに陥りやすいのです」
また、更年期以降の女性は特に注意が必要だ。
「女性ホルモンであるエストロゲンが減少すると、内臓脂肪が増加しやすく、食欲も自然とアップする傾向に」
そこに暴飲暴食や運動不足が加われば、一気にインスリンの働きが弱くなる。60歳以降、女性の糖尿病患者が増える原因はここにある。
食べてもいいけど食べ方に注意!
とはいえこの季節、スイーツや糖質の多いものを我慢するのは至難のワザ。
「どんな食べ物でも食べれば血糖値は上がるのですが、食べ方を工夫するだけでかなり違ってきます」とは管理栄養士の浅野まみこさん。
「食事の際はベジファースト。野菜の食物繊維を先に摂取することで、血糖値の上昇がゆるやかになります。野菜がなければ肉や魚から。肉の摂取によっても血糖値上昇はゆるやかになります。またよく噛むのも大事。噛む回数が多いほうが、血糖値改善を促すというデータもあります」(浅野さん)
さらに櫻岡先生は、「スイーツを食べるなら食後すぐのデザートに。血糖値が上昇する波を1日に何度も作らずにすみ、血糖値が安定しやすくなります」
またおすすめなのが、食後すぐに身体を動かすこと。
「家事をしたり、入浴したり、軽いストレッチ……というレベルでOK。筋肉は血管の中の糖を8割を吸収してエネルギーに変えてくれるので、筋肉を動かすと血糖値は上がりにくくなります」(櫻岡先生)
糖尿病は感染症にかかりやすい。昨年からのデータでは、コロナ陽性者のうち、糖尿病を指摘された人も多いという。いらぬ健康ダメージを受けないためにも、賢い食事法を身につけよう。
■血糖値を上げない、賢い食べ方5箇条
(1)野菜から食べる
炭水化物以外からを心がけて
(2)デザートは食後すぐに
1日に何度も血糖値を上げない!
(3)甘い飲み物に気をつける
糖液は浸透しやすく、血糖値爆上げ
(4)よく噛んで食べる
あごに振動をしっかり与えるべし
(5)食後は身体を動かす
“食後休み”はNG! すぐ活動を
血糖値が上がりにくいのはどっち?
「炭水化物と糖質が多いものほど血糖値が上がりやすいです。それらを食べるときは、食物繊維や油、タンパク質も一緒にとると、上昇がゆるやかに」(浅野さん)。どっちにしようか迷ったら、身体のためにも血糖値が上がりにくいほうをチョイスして!
そば vs 天ぷらそば
天ぷらそばが◎。ヘルシーな印象のそばも、炭水化物なので糖質が多い食品。天ぷらをそえると、脂質が糖の吸収をゆるやかにし、天ぷらの具のタンパク質や食物繊維も血糖値を上げにくくしてくれる。
カルボナーラ vs ナポリタン
カルボナーラが◎。生クリームやベーコンといった脂質の高いものが多く、血糖値が上がりにくい。ナポリタンは糖度の高いケチャップを使っているのが難点。
キーマカレー vs カツカレー
しっかり噛むことができるカツカレーが◎。塊肉なのでタンパク質の量も多く、油で揚げているので糖の吸収もゆるやかに。
シューマイ vs ギョーザ
にらやねぎ、白菜などの野菜が多く使われているギョーザが◎。シューマイは少量の玉ねぎだけと具が少なく、ひき肉のため早食いになりがち。
から揚げ vs フライドポテト
から揚げが◎。ジャガイモはでんぷん質の芋類なので糖質が高い食材。から揚げは鶏肉なので、タンパク質が多く、血糖値の上昇はよりゆるやか。
おにぎり vs カップラーメン
おにぎりが◎。米は植物の皮をむいた状態の食品。小麦を粉にした小麦粉で作るラーメンに比べて、消化に時間がかかり、血糖値も上がりにくい。
グラタン vs ピザ
グラタンが◎。どちらも小麦粉を使っているが、マカロニはデュラムセモリナ粉なので、血糖値の上がり方がゆるやか。グラタンは生クリームなどの脂質が多いのもポイント。
こしあん vs つぶあん
つぶあんが◎。小豆の皮ごと食べるので、こして皮を取り除いてしまうこしあんよりも、食物繊維が多く食感が得られ、糖の吸収もゆるやかに。
ショートケーキ vs チーズケーキ
チーズケーキが◎。チーズのタンパク質や脂肪の代謝に必要なビタミンB2が含まれ、糖質もやや控えめ。小麦粉の量も少なめなのがいい点。
ポップコーン vs ポテトチップス
ポップコーンが◎。とうもろこしも炭水化物だが、粒を丸ごと加熱したものなので、食物繊維の働きで血糖値の上昇はゆるやか。キャラメルコーティングなどは避けて。
おもち vs 米
米が◎。もちはやわらかく消化吸収がよいため、血糖値が上がりやすい。米のほうが食物繊維も多く噛みごたえがあるので満腹感を得られやすく、食べすぎ防止にも。
(取材・文/樫野早苗)
《PROFILE》
櫻岡怜子 ◎糖尿病&アンチエイジング専門医。世田谷内科糖尿病総合クリニック院長。誤解だらけの糖尿病ケアに警鐘を鳴らし、執筆、セミナーなども行う。『「糖尿病予備群」と言われたら最初に読む本』(自由国民社)など著書多数。
浅野まみこ ◎管理栄養士、食と健康のコンサルティング会社「エビータ」代表。1万8000人以上の栄養相談をしてきた経験を生かし、講演やメディア出演など多方面で活躍。『コンビニ・ダイエット』(星海社新書)など著書多数。